蝶のおなご ページ8
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藤襲山から離れ、約2年が経過した。人間の言う2年は意外と長い月日らしいが、何も無ければほんの瞬き程度のことである。
凛｢…旦那様は、すくよかにせりやな？｣
小言を呟き、屋根の上に跳躍し移動した。
こっぽりは滑ってしまう故、片手に持つ。わざわざ地面を歩くことは無い、獲物を逃してしまうやもしれんからだ。されどこの村には鬼の姿が見えず、家屋や地面が月明かりに照らされているだけ。
最後に鬼を喰うたのは、何日前だったかの。
刹那、風上の方から嘔吐しそうな程に、強い血の臭しがした。思わず鼻を抑える。これは、人の血だ。流血が新しければ新しい程、臭いも強く不快な気分になる。それと共に嗅げるのは、鬼の匂い。
｢おにましか…｣
ペったペったと屋根の上を走る。臭いが近くなるに連れ、気分は悪化し今にも戻してしまいそう。だが何者かが鬼に襲われとるのだ。急がずは…。
臭いの元に着き屋根から降り立つ。その場に居たのは一人のおなごの若人。出血が多い、襲われて数分強という所であろう。両端に付いた二つの蝶の飾りが、月夜に照らされキラキラと輝く。微かに掠れた息遣いが聴こえる。まだ生きておるな。
兎も角、この場から離れよう。
凛｢おい…、其方を背負いやらむ｣
獣の姿となり、おなごの羽織っているものを咥えて背負う。まだ温もりはちゃんとある、背中で腕を動かしたような気がした。
わぉおおおお……。
威嚇として遠吠えを一つし、その場を発つ。
？｢おやおや？まさか貴女様も居たとは。これは俺も一歩取られたぜ…｣
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寝息が聴こえる。おなごから漏れた少量の血が、前足から滴り地面に落ち行く。
凛｢其方は未だ、死ぬべからずぞ｣
聞いてはおらんがの。傷が悪化せぬ様に駆けず、されどやや小走りで夜の道を通り過ぎた。
流れ行く雲の隙間から、月光が差す。その瞬間、何かが裂ける音がしたと思はば、手の甲と頬を水のような物が垂れる。
誰ぞ？藤の匂いを嗅ぎ背後を振り向くと、そこに居たのは蝶のおなご。この背中に居るおなごとは違う。
？｢…さんを、ん姉さんを返しなさい！｣
ああ姉妹かえ、安心せい安心せい。
いがみ合っている最中に再び月が雲に隠れ、月明かりのないその隙に血鬼術を解きおなごを下ろして、素早くその場から発った。
姉思いな子よの、きっと優しい娘なのであろう。
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後日、近くの町村では裏で『獣の鬼が何処からか、神出鬼没で現れる』、『その鬼の遠吠えは耳を微かに劈く』と言う奇っ怪な噂が流れたそうな。
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虚(プロフ) - とても良い作品ですね！お気に入り失礼します！好きです(((更新楽しみにしています！ (2020年3月7日 0時) (
レス) id: 7c0e52b0b9 (このIDを非表示/違反報告)
Graecia devil sardine(プロフ) - ユラさん» コメントありがとうございます！前に遊んだスマホアプリに出てきた女の子の話し方を真似てみました。 (2019年11月23日 12時) (レス) id: 890b359372 (このIDを非表示/違反報告)
ユラ - 面白いです！夢主さんの喋り方めっちゃ好き… (2019年11月23日 12時) (レス) id: 98acb8ec1f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Graecia devil sa-thin | 作成日時：2019年11月13日 20時
