好奇心 ページ4
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20年近くが過ぎた頃、閉ざされた部屋の窓から夜の外を眺める。空に浮かぶ星を見つめ、頬杖をつく。
凛「…玉壺」
玉「はい、奥方様…」
暗がりから現れたのは、口の部分にある目に伍と刻まれた十二鬼月の玉壺。こやつは常に城にいる。
凛「今はいつなり…」
玉「卯月の十七日です…」
凛「旦那様はいづこなり…」
玉「無惨様は現在、地下の部屋に篭っております…」
凛「はぁ…またか。これに何年目なりや…」
玉「明日でちょうど、5年目になりますね…」
凛「…さりや。かたじけなく」
旦那様は数年に一度の回数で、城の地下の部屋に篭っている。500年前に此処へ来たばかりの頃も見てみたいと申したが、決して地下には入るなと釘を押された。以来入らないよう、その地下へ行く道を避けている。
直後、琵琶の音が鳴り、暗闇から鳴女が現れた。
鳴「…玉壺様、無惨様がお呼びでございます」
玉「かしこまりました…。では奥方様、失礼致します」
鳴女と玉壺は琵琶の音と共に消え、部屋には静寂だけが残った。再び窓の方を振り向き、外の空を眺める。
旦那様が地下に篭り、時折十二鬼月達を呼び出す。
あの二人以外十二鬼月達は城に居らず、独りの時間だけが過ぎて行くのだ。
凛「…つまらぬなぁ、旦那様も居ず…。やることもあらず」
部屋にある厚い本は全て読んでしまい、玩具や人形も遊び飽きた。城の外で遊びたい、旦那様と二人でしか外へ出た事がない。だが、あの夜からずっと外に出ていない。一人で外を歩きたい。
毎度行くあの街じゃない所は、一体何があるのだろうか。あの街以外にも、一体どんな場所があるのだろうか。好奇心は強くなって行くばかり。
凛「一度ばかりならば、良しやな…」
立ち上がり、箪笥から一枚の着物を出す。裾が腿までと短く、下から徐々に赤くなっている黒い着物。
これは昔、上弦の陸の堕姫から貰った。どれくらいかは分からないが、動きやすく破れにくいのは確かだ。それを黒帯で締め、こっぽりを履き準備は完了。
窓の前に立ち開けると外から強い風が部屋に流れ込み、黄色の混ざった赤い短髪がなびく。
凛「すまぬよぉ…旦那様、妾は少し遊び来るぞ…」
意を決し、窓から勢い良く飛び出す。体は重力に従い垂直に落ちて行き、足から静かに着地した。
無限城の方を振り向いた後、前を振り返り森の中を駆け抜ける。履いているこっぽりの音だけが、カラカラと暗い静寂の中で響き渡った。
_プチンッ……。
ピクッ…。
無「…………凛月?」
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虚(プロフ) - とても良い作品ですね!お気に入り失礼します!好きです(((更新楽しみにしています! (2020年3月7日 0時) (レス) id: 7c0e52b0b9 (このIDを非表示/違反報告)
Graecia devil sardine(プロフ) - ユラさん» コメントありがとうございます!前に遊んだスマホアプリに出てきた女の子の話し方を真似てみました。 (2019年11月23日 12時) (レス) id: 890b359372 (このIDを非表示/違反報告)
ユラ - 面白いです!夢主さんの喋り方めっちゃ好き… (2019年11月23日 12時) (レス) id: 98acb8ec1f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Graecia devil sa-thin | 作成日時:2019年11月13日 20時