【D.gray-man】 Sorry but Goodbye (ページ49)

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「イノセンス、発動」ページ49

「えっと、場所とかまったくわからないんですが…神田さん、わかりますか？」
「…大体はな。」

見渡す限り緑のそこは、空気が済んでいて、まるで一昔前のような世界だ。
家屋は鉄筋には到底見えない造りで、所々ボロけてひびが入っている。
窓も煤けて、中からも外がかろうじて見えるかどうか。
ドアは開け放っており、田舎ならではの農民同士の信頼を表している。

仕事中の住民たちは、黒服に身を包んだ私たちを珍しそうに見てくる。
それでも下手にかかわらないほうがいいと察したのか、触らぬ神に祟りなしとでも言うかのようにただ何も言わず見つめてくる。
好奇心の視線を全体に浴びせられ、なんとなく居心地が悪い。

「そういえば、今回も探索部隊の人たちは一緒に来てくれないんですね。」
「……テメェの前回の任務なんて知ったこっちゃねぇが、アクマが大量出現する場所に探索部隊を寄越して無駄死にさせるほど俺らは人員が足りてねぇんだ。」
「…あ、そりゃそっか。」

前回も、下手したら被害者を増やすだけだったかもしれないもんね。
実際に、探索部隊の人たちは虚ろな顔で戻って、森に関しての記憶は全部消えたんだから。

それでも、勝手に道案内とかは探索部隊の人たちの仕事だと思っていた。
違ったのかな？そんなに深刻な人員不足？

だんだんと道に草葉が目立ってきて、少しずつ道から外れていることに気付いた。
それにつれて、人の数もどんどん減っていく。

「…什人呀！？他想死！？」
「我也不知道！哎，不理他！我不想死！」
「我也不想！走吧！」

二人組の農民とすれ違ったと同時に、驚愕の表情をされる。
まるで化け物に出会ったかのように驚きで目を見開きながら隣の仲間と早口に話し合い、そそくさと関わらないように早足で逃げ出す。

「…農民に被害でも出てるんでしょうか？」
「…さぁな。」
「明らかにこの先を怖がっているような感じの様子でしたよ。それとも私たちの存在が怖いのかな。」

独り言のように話しながら歩けば、ついに家屋は見えなくなった。
人も途絶え、気味が悪い鳥のような鳴き声がガァガァとあたりに鳴り響く。
急に空気が冷え込んだ気がして、思わず身震いをした。
団服が温かいおかげで、冷たい風にそこまで動じることはなかったけど。

「え、っと、近いですよね？」
「構えろ。…多いぞ。」

神田さんは格好いいポーズで鞘から漆黒の刀を抜き出す。
そして二つ指で刀身をなぞり、私と同時に呟いた。

「イノセンス、発動」