【D.gray-man】 Sorry but Goodbye (ページ38)

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「リナリーちゃんには、わからないよ…」ページ38

「…にしても、Aちゃんはすごいなぁ…」

唐突にそう切り出し、リナリーちゃんはお湯にゆっくりと使った。
艶めかしいほどの白い肌に、女のくせになんとなくときめく。

「え、何が…？」
「弱いとわかってても、めげずに特訓なんてして強くなろうと思うんだもん。私には無理かなぁ…。」

苦笑交じりにそう言いながら笑ったリナリーちゃんに、私は口を閉ざした。
なんだか…なぁ。

「でも、リナリーちゃんは強いじゃん、ね？」

少し声が固い。
自然に俯いてしまう顔を、何とか意識しつつあげる。
それに気づかず、リナリーちゃんは私を見て笑う。

「そんなことないよ。私だってアレン君や神田やラビみたいに強くない。やっぱり女の子だからって理由もあるからかな…頑張ってるけど、サボっちゃうんだよね。」

えへへ、と頬を掻いて可愛らしく笑うリナリーちゃんに、少しだけ憤りを感じた。
水音をたてながら、両腕両足から力を抜く。
岩壁に寄りかかりながら、静かに波紋を立てる水面を見つめた。

「…それって、甘えられるほど余裕があるからじゃない？」
「え？」
「……自分は取り返しのつかないほど弱くて、師匠にも仲間にも戦闘センスが皆無なんて言われて、みんなはどんどん先に行っているのに、自分だけ置いてけぼりなんて、そんな感情を感じたことのない人は…わからないんじゃないかな。」

まるで自分に言い聞かせるように、落ち着いた声で話す。
震えているように聞こえた声に、気づかないふりをして蓋をした。
胸元が気持ち悪い。締め付けられるような感覚。
これはどういう感情なのかはわからない。
少なくとも、苦しいということは、少しだけわかった。

「…Aちゃん？」
「……あ、ごめんねっ」

名前を呼ばれて慌てて取り繕う。
笑顔を張り付けて、まるで我に返ったかのような演技をしてみせる。

「焦りが表面上に出ちゃったかも！もうシンクロ率も低いからさぁ…こんなことしてられないな、私もっと特訓してくるね！よかったら今度一緒に特訓しようよ！」
「…あ、うん…そうだね。」

にこりと笑ったリナリーちゃんに、私はウィンクをして見せた。
ざばっと水滴を纏いながらあがり、タオルを持ちながら風呂場を出た。

ばたん、と味気ない音を立てて、リナリーちゃんが視界から消える。
火照る体に丁度いいほど冷たい扉に凭れかかり、座り込む。

才色兼備、気が利いて美人で何でもできて強くて…

「リナリーちゃんには、わからないよ…」

紛れもない、嫉妬心。