【D.gray-man】 Sorry but Goodbye (ページ18)

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<…“彼”は…私にとって、誰よりも…大切だった人…>* ページ18

(死体の描写があります。飛ばしても大丈夫です)
絵本で見た世界。
夢に見た世界。
それが今、目の前にあるような錯覚に陥った。

丸太小屋。世間ではログハウスと呼ばれるもの。
まるで自然の一部みたいに、背景と同化して見える。
しっかりとした造りで、人間が造ったとは思えなかった。

＜…私たちが、造ったの＞

まるで私の心を読んだかのように、ひとり言のように、少女は呟いた。
…これを？プロとか業者とかじゃなくて…素人が？

「…すごい」

思わず簡単が声に出てしまうほど、私は驚きに呑まれていた。
こんなものを、何も知らない人たちが造るなんて、ほとんど不可能に近い。
しかもこの完成度…奇跡としか言えない。

＜…そんなにすごいことじゃないわ。…“彼”はそういうのを少し、齧っていたから＞
「…彼？」

私が不思議に思っていた点をちょうどラビが尋ねたので、私はじ、と彼女のほうを見つめた。
その言葉がラビの口で繰り返された瞬間、彼女の表情が暗くなったのを私は見逃さなかった。
俯いたまま、彼女はぐっと拳を握りしめた。

＜…“彼”は…私にとって、誰よりも…大切だった人…＞

開けて、とお願いされた私たちは、そのドアを開けた。
中は何も変哲のない、写真で見るような、完成したログハウス。
ただ、一つだけ異変があった。

「…っぐ…」
「…ひでぇ臭いさ…」

…前に、一度だけ嗅いだ事がある。
この臭いは…
…死人の臭い。

おそらくラビも、この臭いの原因を知っているのだろう。
口鼻を手で覆いながらも、眉間に皺を寄せていた。
こんなに強い臭いを発しているということは…きっとこの中に、いる。

鼻と口をラビと同じように手で覆いながらも、隙間から忍び入る臭いに、私は吐き気を催した。
生ごみを腐敗させたような臭い…でも、甘い。まるでバニラアイスに、腐ったものを混ぜたような臭い。
涙さえ出てきそうだ。

横にいたラビと顔を合わせて、頷いた。
少女は扉の傍に立ったまま、じっと動かない。
…おそらく、大丈夫。

ラビが先頭をとってくれ、私たちは一歩、一歩とゆっくりログハウスの中に歩み寄った。
ログハウスの中は本当に何の変哲もなかった。
みているだけで木の匂いが漂いそうで、家具も一式揃えられていて、色も統一されていた。
こんなところに住んでみたいとさえ思ってしまった。

…ベッドの上に、二体の死体さえなければ。

白骨死体。
真っ白な、少し黄ばんだその骸骨は、見ているだけで寒気を及ぼした。