【D.gray-man】 Sorry but Goodbye -Terzo-

「お前、ブローカーって知ってるか？」 ページ8

「おいっしぃ……」
「うわぁ幸せそうな顔さ」
「今死んでも悔いはない」
「殺しても死ななそうな顔でもある」

ごもっとも。
フォークを咥えながらほっぺたが落ちそうなケーキを頬張る。
甘い味と、噛みしめればさらに広がる甘い味。
甘党の私にとってはもう大興奮だ。
幸せすぎる。

「これ毎日食べれるんだったら私、この汽車一生住んでもいいやぁ」
「いや、それは勘弁」

苦笑するラビは朝から肉を齧ってる。
チーズがトロリと垂れているそのピカタは、明らかに朝食べるものではない。
見てて胃がもたれそう。
という私は、朝っぱらからラザニアやラビオリ余裕で食べれるけどね！

「……なぁ」

肉にざくりとフォークを突き立て、手のひらをフォークの柄にかける。
そんな格好いいポーズをこともなげにしながら、ラビは呟いた。
真剣な面持ちで、ラビは続ける。

「…………気づいてるか？」

ガリ、と気づかずにフォークを噛み締めていた。
わずかに鉄分の味がした気がして、顔を顰める。

「……視線のこと？」
「あぁ」
「昨日からずっと感じてたけど……」
「昨日とは違うさ」

正直あまり違いが分からない。
でも、ちょっとだけ理解できた。

昨日のは興味津々といった純粋な心持ちの視線。
大方珍しい服を着た奴らだと注目を浴びていたのだろう。
あのときまでは、どこかの大道芸人としか思われてなかったはずだった。

だけど今は？

先ほどのラビのように、フォークをケーキの上に突き立てる。
そして睨むように横目で、向こう側の席の人を見る。

……笑ってる？

「悪意のある、視線だね……？」
「嫌な予感さ」
「エクソシスト関連？」
「ひょっとしたらな。 見覚えのない客がごまんといるさ」
「客全員の顔を覚えてるの？」

これもブックマンの能力さ、と自分のこめかみを指差し笑うラビ。
だけど今は、笑いかえすことが出来なかった。

ねっとりとした視線。
それは私の前後左右から突き刺さるように浴びせられる。
……嫌な気持ち。
そして、あの歪んだ笑み。

ぞくり、と背中が栗立つ。

「出るぞ」

ラビはその一言だけを放つと、同時に席を立った。
がたり、というその音が私の肩を震わせた。

「う、うん……」
「大丈夫か？」
「……この視線、気持ち悪い」

それだけ青ざめているのだろうか。
立ち上がり、居心地悪そうに歩けばラビが背中を支えてくれた。
どの目ともあいたくなくて、俯いて歩く。

そしてラビは、言った。

「お前、ブローカーって知ってるか？」

「まさか」→←「ケーキ！」

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