【D.gray-man】 Sorry but Goodbye -Terzo-

「あの子はこれから、どうするの？」 ページ45

「カイトは？」

何気なく聞くと、リナリーちゃんが長い髪を揺らしながら顔をあげた。
そして小さく可愛らしい笑みを浮かべて答える。

「さっき寝ちゃった。 ずっと不安そうだったから寝付くまで一緒にいてあげたの」
「そっか……ごめんね、カイトの世話押し付けちゃって」
「ううん。 素直で可愛い子だったから楽しかったわ」

本当にうれしそうに笑うリナリーちゃんに私は胸を撫で下ろす。
予想通りカイトはリナリーちゃんになついてくれたようだった。
ヘブラスカの間に行く前に会ったカイトはしっかりとリナリーちゃんの手を握っていたから、あまり心配はしていなかったけど。

「あの子はこれから、どうするの？」
「……まだ決まってないわ。 でもここで彼を預かるにはあまりにも……」

その言葉が最後まで言われないうちに、私は溜息をついた。
予想はしていたことだったからあまり驚きも、極端な感情もなかったけど……
諦めたような、そんな感情で頭の中は真っ白だ。

やっぱり施設行きになるのだろう。
カイトには親もいないし、親戚も不明だ。
だからといって教団で預かるには危険すぎる。死に直面してしまう。

……情が湧いてしまったから、捨てがたいな。

「私たちのね、知り合いにいい孤児院があるの。 特別関わりのある孤児院でね……ハースト孤児院って言うんだけど、エクソシストの一人がそこから来ているの。 そこなら安全だと思うんだけど……どう？」
「え……どうって」

何故私に聞くのか分からないまま首を傾げる。
安全も保障されていて、いい孤児院というのならば文句はないだろう。
まるで私に決定権があるかのような問いに、訳が分からない。

「……今のカイトの保護者は、Aでしょ？」
「あ……そっか」

すとんと心にその言葉が落ちてくる。
納得したようにうなずいてから、私はあらためて目の前のカップを眺めた。
まだ半分も飲み干していないココアが、カップの中で波紋を作っていた。

複雑な思いが絡み合い、今すぐ逃げたい衝動に駆られてしまう。
数時間の間にいろんなことが起きすぎて、本当に休憩が欲しい。
誰も干渉されない時間が欲しい。
急激にあの白い空間が恋しくなってきた。
あの空間にいた間は、あんなにも気が狂いそうだったというのに。

「考えなきゃいけないことがいっぱいあって……頭がパンクしそう」
「……あ、そうよね。 今日はとりあえず保留しよっか」

そう言うリナリーちゃんのやさしさに甘えて、私はそのまま部屋に戻った。

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