【D.gray-man】 Sorry but Goodbye -Terzo-

「……本当なんさ？」 ページ42

告げられた言葉に私の思考が止まる。
有り得ないという言葉が何度も頭の中で鼓動する。

冗談かと思い、突拍子もなくて思わず笑いそうになった。
だけどクロス師匠の目は至って本気だ。
それに私だけじゃなくてアレン君やコムイさん、他の人たちもみんな知っているはずだ。

クロス師匠はこんなことで嘘をつくような人ではないこと。

何度も瞠目して、なんとか言葉を飲み込もうとする。
だけどそれは明らかに私の脳内ではキャパオーバーで、次から次へと混乱が続いていくだけだった。
考えれば考えるほどなぜか気分が悪くなり、ついには吐き気までしてくる。

どうして
いつから

そんな馬鹿らしい問いかけでさえ意味を持たないように思えて口を開けないままでいる。
たとえ何かを言っても、言葉はきっと喉に張り付いたまま出てこないのだろう。

そっと視線を上にあげ皆を見つめる。
誰もが、驚きと困惑に満ちた表情で私を見てくる。

そんな顔で私を見ないでほしい。
私だって困惑しているし、好きでこうなったわけじゃない。

第一何故こんなことになっているのかさえ。

「……A」

名前を呼ばれ思わず目を背ける。
あんな目で見られ続けることは、地獄だった。
頼むからもう、解放してくれと泣き叫びたいほどに。

「……本当なんさ？」

酷く冷静そうなラビの声が私の鼓膜を揺らす。
私は今酷い顔をしているんだということが、何よりもわかった。
ただ、それだけが事実で。

耳を塞ぐように両手で頭を抱え、必死で頭を横に振る。
何度振っても、どうしてもその現実は私から離れることはなかった。
かえって、それが現実なのだとじわりじわりと侵食するように思い知らされていく。

瞼の裏が熱くて、泣きそうだけど涙が出ない。
顔をくしゃりと歪めて泣きだしそうになるけど泣きたくない。

今すぐここから抜け出したい。
この瞬間と比べれば、あの真っ白な空間のほうがよっぽどマシだった。
何も考えない世界に逃げ出して、そこに籠って二度と出てこなければいい。

準備もなく突きつけられた事実は残酷すぎて、私の心を酷く抉った。
床に膝をつき、蹲る。
こんな惨めな私の姿を見ないでほしい。

頭の中では、ずっとクロス師匠の言葉を反芻していた。
考えたくないのに。
体全体が考えることを拒否しているのに。
その事実は痛いほど、私にしがみついてくる。

『お前は、解離性同一性障害を持っている』

言葉が針のように心を突き刺してくる。
涙が一筋、頬を伝った。

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