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「……それは私であり、私じゃない」 ページ40

「……それは私であり、私じゃない」

自分の言葉が、思っているよりも冷静だ。
頭の中は余計なことは考えられなくて、ただぼぅっと言葉を紡ぐ。
私は今、どんな表情をしているんだろう。

誰もが私の言葉に意識を向ける中、私はただ上を見上げた。
視線の先の暗闇の中では、きっと大元帥が耳を済ませて聞いているのだろう。
あの人たちには、最初からいい印象を抱かなかったのを覚えている。

「私は彼女を、スノーレディと呼んでいます。 それが私のイノセンス……氷の兎の名称。 彼女も、その呼び名を気に入っていました」

痛いほどの沈黙が耳を刺激する。
少しだけ耳鳴りがし始めて、だけど私は少しも動揺することはなかった。
痛いほどに頭が冴えていて、痛いほどに口がすらすらと動く。

「……彼女が今まで表に出てくることはありませんでした。 いつも、私の中で私に話しかけてくるだけで……」

一息置いてから、また顔をあげて皆を見据える。
理解しているような、不可解なようなそんな顔をしながらこちらを見てくる。

私だっていまだに混乱している。
スノーレディはいつだって私の体の中にいて……体の外に出ることはなかった。
ましてや、私の代わりに体を動かせるなんて。

じわりと恐怖を感じて、思わず自分の体を掻き抱いた。
自分の体が自分のものではなくなってしまうようなそんな恐怖を、目をきつく瞑ることでやり過ごそうとする。
だけどその恐怖は、簡単には私の心から消えることはなかった。

「……A、」
「言っておくが」

アレン君の声を遮るように、唐突に今まで黙ってこちらを見つめてきていたクロス師匠が口を開く。
その拍子に煙草が口から零れ落ち、それをティム・キャンピーがすかさず噛み砕く。
それさえも気にならないほど、私はクロス師匠に意識を集中させた。

「お前はそのスノーレディとやらが今まで外に出たことがないと言ったが……それは嘘だ」
「……え?」

クロス師匠の言葉の意味が一瞬理解できなくて、私は目を見張る。
他の人たちも、驚きに目を見開きながらクロス師匠を見る。
当の本人は、面倒くさそうにそのワインレッドの長髪を掻き乱しながらまた口を開く。

「ただ、此処まで大規模なのが初めてなだけだ」
「……嘘、でしょう……そんなこと、記憶が……」
「お前が覚えていないだけで、俺ははっきり覚えているが?」

挑発気味のクロス師匠の言葉に、私は俯く。
視線は地面に釘付けで、だけど頭の中は他のことは考えていた。

私は、誰?

「いい憶測だが、外れだ」→←「私、さっきまで……どうしてた?」



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作品ジャンル:アニメ
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∧∧ネコミミ∧∧@玉ねぎ@オニマス(プロフ) - mo-taさん» 面白いですかありがとうございます!もう4冊目なのでなんでこんな長引いてるんだよ!と茶舞台ひっくり返したい思いです! (2014年9月6日 12時) (レス) id: d6bef4f0e5 (このIDを非表示/違反報告)
mo-ta - どうも!mo-taです。この作品すごく面白いと思います!!更新楽しみにしてます! (2014年8月23日 6時) (レス) id: 58b0bd4753 (このIDを非表示/違反報告)
∧∧ネコミミ∧∧@玉ねぎ@オニマス(プロフ) - 銀来さん» お久しぶりです!またコメくださって本当に嬉しいです!クロちゃん格好良くしたいっていうかどんなキャラも格好良くしたい( (2014年8月11日 19時) (レス) id: d4f6060cfe (このIDを非表示/違反報告)
銀来(プロフ) - お久しぶり(?)です!ク、クロちゃんが...クロちゃんがカッコ良く見えましたΣ(゚д゚lll) (2014年8月11日 8時) (レス) id: 578c57ad6f (このIDを非表示/違反報告)
∧∧ネコミミ∧∧@玉ねぎ@オニマス(プロフ) - 銀来さん» 大好きだなんて嬉しい言葉をありがとうございます。他の作品も御閲覧していただいてるなんて頭が上がりません…!ありがとうございます、頑張らせていただきますッ (2014年8月7日 15時) (レス) id: d4f6060cfe (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:∧∧ネコミミ∧∧ | 作者ホームページ:   
作成日時:2014年5月18日 18時

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