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「……わかりました。 先を急ぎましょう」 ページ37

「Aちゃん!」

聞き慣れた高い声。
私を呼び止めるリナリーちゃんの声は、いつも切羽詰まったようなそんな声だな、と今更気づく。
足を止め、振り返る。

「……リナリーちゃん……カイト」
「お姉ちゃん!」

名前を呼べば、びくりと小さな体が反応する。
すぐに駆け寄られ、足にしがみつかれた。
心なしか体が震えている。
何かあったのだろうか、なんて聞く必要もない気がした。

「……お前の子か?そいつ」
「クロス師匠そういう思考やめてください。 ……任務先で出会った子です。 親が目の前で……」

そっとカイトの頭を撫でる。
顔を私の足に押し付けるように隠しているところ、涙目なのか既に泣いてるのか。
じわりと私の足元の服がぬれる感触がした。

「大丈夫?……カイト」
「……さっき、」
「ん?」

出来るだけ優しい声で問いかける。
足の拘束を解いて、目線を合わせるように屈めばやっぱりカイトは泣いていた。
嗚咽をあげながら、必死で言葉を紡ぎ合わせる。

「……お姉ちゃ、んと……そっくり、だけど……違う、人……」
「……え?」
「……ぼ、僕のこと、見て……笑って……怖くて、泣いたら……そ、その人……氷、創り出して……」

事態が全く読み込めない。
私のそっくりさんがいて、その人がカイトを見て笑って?
そして今の事態を作り上げたとでもいうのか?

「その人のこと、詳しく説明できる?」
「お、お姉ちゃんと、そっくり……でも、顔……違う……ニヤニヤ、笑ってて……」

それは、きっと私なんだろう。
意識がなかったときの私……白い空間に閉じ込められていた時の、私……

「そっか。 怖かったね、カイト。 でももう大丈夫だよ。 その怖い人はもういなくなったからね」
「うん……」
「もうちょっとだけリナリーお姉ちゃんと一緒に待っててくれる?」
「まだ……どこか行くの?」

怯えの表情で私を見上げてくるカイトに、私は微笑みながら頭を撫でる。
そしてその小さないまだ震えている体を、リナリーちゃんに預けた。
踵を返した私の顔は、もう笑っていなかったと思う。

じっとクロス師匠を見据えれば、目を逸らされる。
隣でアレン君が息を呑むのが聞こえた。

「事態は読み込めました。 そしてクロス師匠……貴方はこの出来事の鍵を握ってるんですね?」
「平たく言えばそうだな」
「……わかりました。 先を急ぎましょう」

少しずつ理解してきた。
少しずつ、私が何なのかを理解してきた。

あの「怖い人」……あれは紛れもなく、私だ。

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作品ジャンル:アニメ
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∧∧ネコミミ∧∧@玉ねぎ@オニマス(プロフ) - mo-taさん» 面白いですかありがとうございます!もう4冊目なのでなんでこんな長引いてるんだよ!と茶舞台ひっくり返したい思いです! (2014年9月6日 12時) (レス) id: d6bef4f0e5 (このIDを非表示/違反報告)
mo-ta - どうも!mo-taです。この作品すごく面白いと思います!!更新楽しみにしてます! (2014年8月23日 6時) (レス) id: 58b0bd4753 (このIDを非表示/違反報告)
∧∧ネコミミ∧∧@玉ねぎ@オニマス(プロフ) - 銀来さん» お久しぶりです!またコメくださって本当に嬉しいです!クロちゃん格好良くしたいっていうかどんなキャラも格好良くしたい( (2014年8月11日 19時) (レス) id: d4f6060cfe (このIDを非表示/違反報告)
銀来(プロフ) - お久しぶり(?)です!ク、クロちゃんが...クロちゃんがカッコ良く見えましたΣ(゚д゚lll) (2014年8月11日 8時) (レス) id: 578c57ad6f (このIDを非表示/違反報告)
∧∧ネコミミ∧∧@玉ねぎ@オニマス(プロフ) - 銀来さん» 大好きだなんて嬉しい言葉をありがとうございます。他の作品も御閲覧していただいてるなんて頭が上がりません…!ありがとうございます、頑張らせていただきますッ (2014年8月7日 15時) (レス) id: d4f6060cfe (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:∧∧ネコミミ∧∧ | 作者ホームページ:   
作成日時:2014年5月18日 18時

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