「――クロス、師匠……」 ページ34
『おいで』
「…………！」
膝の間にうずめていた顔を上げ、私は周りを見渡す。
確かに聞こえた。
誰の声とも知れぬ、女性の声だ。
大人っぽく艶のあるそれは、この空間に確かに響いた。
「……誰？」
返答はない。
先程の声も、少し反響しただけで聞こえなくなった。
一体なんだというのか。
「……おいで、って言ったよね……」
柄にもなく恐怖が勝る。
自分の体をしっかりと抱きしめながら、私はあたりを見渡した。
それでも見えるものは白だけ。
むしろその白さえも、本当に見えているかどうか分からないでいた。
独り言にも誰も答えてくれない。
独りぼっち、
独りぼっち
一人ぼっち
もうこの世界には一秒たりともいたくなかった。
誰でもいいあの声でもいい。
どうか、私を連れ出してほしい。
気が狂いそうなほど私は縋る。
泣き出しそうなほど私は弱る。
「……ラビ」
ぎゅぅと手を握りしめ、ただ一人の笑みを思い浮かべた。
私はどうすればいい？
私はどうこの空間で生きればいい？
もうここから出ることはできないのだろうか。
ならば、ここから私はどう生き続ければいいのか。
それとも、
「……」
薄々感づいていた気がした。
だけどこれほどまでにはっきりとした答えに、私は目を見開いた。
きつく握りしめていた手も自然と弛んで、解けた。
……生きていないとすれば、
私がすでに……死んでいるとすれば。
この数日間……正確な時間はわからないけど、短くはなかった。
その間ずっと食料も何も口にしていない。
眠ってもいない。
なのに眠気は襲わない、喉は乾かない、お腹も減らない。
私が「そう」だと確証づけるには、十分すぎる証拠なのではないだろうか。
次第に手が震えだす。
その手で、私は口を覆った。
くしゃりと顔をゆがめ、私は泣きそうな目を押さえつける。
私は……イノセンスに呑まれたのだろうか？
咎落ちになって……死んだのだろうか？
それとも、みんなに……ラビ、や……ブックマンさんや、他の……エクソシストのみんなに……
リナリーちゃんに、神田さんに、アレン君に、クロウリーさんに……
殺された、のだろうか……？
「……私」
『おいで』
再び強い声が響く。
弾かれるようにして私は立ち上がった。
やがて自分の意識がはっきりと覚醒していくのを覚える。
違う、
私は死んでなんかいない。
瞬きをした刹那、私は元の世界に戻っていた。
色のある世界、みんながいる世界……
そして私の目の前には、
「――クロス、師匠……」
「……私が、やったん……ですよね……？」→←「……じゃあどうすればいいのさ」
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∧∧ﾈｺﾐﾐ∧∧@玉ねぎ@オニマス(プロフ) - mo-taさん» 面白いですかありがとうございます！もう4冊目なのでなんでこんな長引いてるんだよ！と茶舞台ひっくり返したい思いです！ (2014年9月6日 12時) (
レス) id: d6bef4f0e5 (このIDを非表示/違反報告)
mo-ta - どうも！mo-taです。この作品すごく面白いと思います！！更新楽しみにしてます！ (2014年8月23日 6時) (レス) id: 58b0bd4753 (このIDを非表示/違反報告)
∧∧ﾈｺﾐﾐ∧∧@玉ねぎ@オニマス(プロフ) - 銀来さん» お久しぶりです！またコメくださって本当に嬉しいです！クロちゃん格好良くしたいっていうかどんなキャラも格好良くしたい（ (2014年8月11日 19時) (レス) id: d4f6060cfe (このIDを非表示/違反報告)
銀来(プロフ) - お久しぶり(？)です！ク、クロちゃんが．．．クロちゃんがカッコ良く見えましたΣ(ﾟдﾟlll) (2014年8月11日 8時) (レス) id: 578c57ad6f (このIDを非表示/違反報告)
∧∧ﾈｺﾐﾐ∧∧@玉ねぎ@オニマス(プロフ) - 銀来さん» 大好きだなんて嬉しい言葉をありがとうございます。他の作品も御閲覧していただいてるなんて頭が上がりません…！ありがとうございます、頑張らせていただきますッ (2014年8月7日 15時) (レス) id: d4f6060cfe (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：∧∧ﾈｺﾐﾐ∧∧ | 作者ホームページ：
作成日時：2014年5月18日 18時
