【D.gray-man】 Sorry but Goodbye -Terzo-

「……じゃあどうすればいいのさ」 ページ33

「……はぁ」

もう何度目の溜息だろうか。

この白い世界に閉じ込められて、もう何日経った？
いや、この世界では「時」というものが本当に存在するのか？

音もしない、何もない、ただ白いだけの空間。
そこで私は、気を失いそうなほど長い間を過ごしていた。

まだ辛うじて気が狂っていないのは、私がずっとその事実から目を逸らしているから。
頭の中ではずっと別のことを考え、時には静寂を打ち破るために独り言も呟いた。
そろそろ存在しない人を作り上げて話しかけてしまうところだった。
流石にそこまで行くと危ない人だ。

いつになったら出られる？
むしろここに出口はあるの？

――……一生、このままってこともあり得る……？

ぞくり、と体が粟立つ。
慌てて私は首を横に振って、何か別のことを考えようとした。

「さて！今度はなんの妄想をしようかな！」

自分を元気づけようと、明るい声をあげる。
だけどそれは気づかないうちに、ただ心の中のむなしさを広げていっただけだった。

「……っ、せめてここに他に誰か……もう一人でも、いてくれたら……かなり楽になるんだけどなぁ」

一人は好き。
……独りは嫌い。

恐らくみんなそうなんだろう。
誰だって静かな空間が恋しくなる。
一人で、時間を過ごしたくなる。

でも……独りぼっちは嫌だ。
……独りは、怖い。

手が震えているのに気づく。
私は慌ててその右手を、左手で包み込みきつく握りしめた。
落ち着け落ち着け、と心の中で念じながらゆっくりと深呼吸をする。

思ったよりも、思った以上に、私はダメージを受けているらしい。
これ以上一人になり続けてたら、心が持たない。
……それは分かっていた。

「……じゃあどうすればいいのさ」

答えのない答え探しのようだ。
出たくても出られない。
此処には壁も何もない。
出口も、時という概念すらない。
何もない。

何も、ない。

……何も。

「……私は、ちゃんとまだ……存在、してるんだよね……？」

怖くて泣きそうだ。
どれだけ勇気づけても、どうしても怯えや恐れが勝ってしまう。
完璧に弱い心を封じ込めるだけの強さ、私にはまだなかった。

もしもここに時という概念があるのならば、おそらく私はもう何日も寝ていない。
……眠れないのだ。

寝るには、頭を空っぽにしなければいけない。
だけど空っぽにすればすぐに、恐怖や焦燥の感情、「これからどうすればいいのか」
そんな答えのない疑問が浮かび上がる。

だから私はそれから、逃げるしかなかった。

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