【D.gray-man】 Sorry but Goodbye -Terzo-

「……もう、何なの……」 ページ31

目が覚めた時、そこは真っ白な世界だった。
一瞬だけパニックに陥りそうになったけど、ふと思い出す。
そう、前にも同じような……こんな状態になったことがある。

それならば、と見下ろしてみるやはり衣服を纏ってはいなかった。

「……ここ、は……」

前に、自分と同じ姿同じ声のスノーレディと会話した時の……あの場所だ。
場所って言っていいのだろうか……よくわからないけど、とりあえず空間と言ったほうが正しいだろう。

「……スノーレディ？」

返事はない。
まるでトンネルの中にいるかのように、声が反響するだけだ。
いないのかな、と私は終わらない空間を歩く。
夢の中にいるようで、歩いても歩いても壁やなんらかの阻害物にぶつかることはない。
とはいえ、私は見た夢を覚えていることはほぼないのだけれど。

「……スノーレディ？…………いないの？」

やっぱり返事は返ってこない。
此処にはいないのだとそろそろ断定してもいい頃だろう。
それでも私は諦めきれず、彼女の名前を呼び続ける。

一人だと決めつけるには、孤独すぎる空間だ。
自分に何かを考える暇を与えたくない。

じゃなければ、「いつまでここにいるのか」「ここはどこなのか」「スノーレディのことは」
そんな、答えの見つからなさそうな問いが頭をぐるぐる回ってしまう。
そのまま自分を追い詰めて混乱して、泣いちゃったりするのはごめんだ。

何を隠そう、一人になることは嫌いじゃないけど孤独はすごく嫌いだ。
だから、人とのかかわりがあって人の温かみがあるあの教団が、ホームが大好きだったのに。

ここは……
冷たくも温かくもない。
むしろ温度というものがないのだと思う。

それでも、どこか冷たい気がした。
それは、きっとここには誰もいないから。

「……もう、何なの……」

やるせなくなって、私はとりあえず床に座る。
天井を仰いでみるけど、やっぱりそこも真っ白。
どこにも影はなくて、ただ白、白、白……

「……っ……」

気がくるってしまいそうだ。
私はこれからどうしたらいいんだろう。

「……夢、なのかな……？」

でも、「これが夢だ」と自覚できた夢を見たことはない。
今までどんなバカげた、どんな有り得ない夢でも、夢だと自覚できたことはない。
古典的な方法で頬を引っ張ってみても、やっぱり痛いし。

じゃあこれは夢じゃないのかというと、じゃあここはどこなんだという話になる。
そんな無限ループ。
早く出たい。
夢なら覚めてほしい。

そう、願っていた。

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