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「こ、こ、怖いよラビ!」 ページ4

「……うし、そろそろ寝ようぜ!」

長い沈黙のあと、ラビはまるで吹っ切れたように元気よくそう言った。
それは私の罪悪感を無駄に掻き立てるだけで、無性に空しくなった。

ラビから貰ったぬいぐるみを抱きしめながら、私はラビのいる方向へ手をかざす。
やがて重力のせいで手が痺れ疲れてきて、パタリと力なく腕を顔の隣に休めた。

……私は、やっぱり力なきものなのかな。

ラビの支えにすらなれない自分の無力感を、虚空の中に感じる。
ラビは、出会ってばかりの私をあんなにも支えてくれたのに。
私はラビを支えるどころか……嫌な思いをさせてるんじゃないだろうか。

「……A?もう寝たんさ?」
「ふぎゃぁっ!」

返事がない私を心配したのか、ラビが顔を出す。
それも上下逆さまで。

幽霊そのものを連想させるその様子に、私が悲鳴をこらえきれないのはしょうがないことだろう。

「こ、こ、怖いよラビ!」
「ははっ、悪い悪い。 でもちゃんと返事しろよ」
「うん、ごめんちょっと考え事してて……」

再びぬいぐるみの中に顔を埋める。
ラビの「じゃあ明かり消すぞー?」という声がどことなく遠くに聞こえた気がした。
小さく承諾の声を唇の隙間から漏らす。

ずきり、と心が痛む。
――私は無力だ。
まるで自分を戒めるかのように、その言葉が私の中で繰り返された。

パチリ、という簡素な音がして唐突に訪れた暗闇。
どことなく私の焦燥感を掻き立てられた。
突然すぎてしまったのか、急に光が恋しくなった。

いきなり暗転したせいで少しだけ瞳が痛い。
それもすぐ慣れて、痛みも薄れていったけど。

「……ラビ?」

自分の上でベッドが軋み、布団が衣擦れの音を出すのを聞きながら、私は彼の名前を呼んだ。
衣擦れの音はぴたりとやみ、代わりに彼の声が聞こえる。

「なんさ?」
「……うん、あのね」

言いづらくて、淀んでしまう。
涙は出そうにないけど、涙なしで泣いているようなそんな感じに瞼の裏が熱い。

「……ごめんね」

小さく呟いたつもりその言葉は、思いの外大きく響き渡った。

分かっている、誰も私を責めはしないこと。
分かっている、私が自分で戒めているだけなのだということ。

だけど私は、自分が完璧でなくては気が済まないらしい。

「え、何に対しての謝罪さそれ?」

予想通りの素っ頓狂な声に、だけど少しだけ心が癒された。
思わず笑みもこぼれ、私は口を開く。

「知ーらないっ」
「何さそれ!変な奴」

今はただ、彼の笑い声が愛しくて。

「うぇえ、寝ぼけてたぁ……」→←「……いなくなっちゃうの?」



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作品ジャンル:アニメ
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∧∧ネコミミ∧∧@玉ねぎ@オニマス(プロフ) - mo-taさん» 面白いですかありがとうございます!もう4冊目なのでなんでこんな長引いてるんだよ!と茶舞台ひっくり返したい思いです! (2014年9月6日 12時) (レス) id: d6bef4f0e5 (このIDを非表示/違反報告)
mo-ta - どうも!mo-taです。この作品すごく面白いと思います!!更新楽しみにしてます! (2014年8月23日 6時) (レス) id: 58b0bd4753 (このIDを非表示/違反報告)
∧∧ネコミミ∧∧@玉ねぎ@オニマス(プロフ) - 銀来さん» お久しぶりです!またコメくださって本当に嬉しいです!クロちゃん格好良くしたいっていうかどんなキャラも格好良くしたい( (2014年8月11日 19時) (レス) id: d4f6060cfe (このIDを非表示/違反報告)
銀来(プロフ) - お久しぶり(?)です!ク、クロちゃんが...クロちゃんがカッコ良く見えましたΣ(゚д゚lll) (2014年8月11日 8時) (レス) id: 578c57ad6f (このIDを非表示/違反報告)
∧∧ネコミミ∧∧@玉ねぎ@オニマス(プロフ) - 銀来さん» 大好きだなんて嬉しい言葉をありがとうございます。他の作品も御閲覧していただいてるなんて頭が上がりません…!ありがとうございます、頑張らせていただきますッ (2014年8月7日 15時) (レス) id: d4f6060cfe (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:∧∧ネコミミ∧∧ | 作者ホームページ:   
作成日時:2014年5月18日 18時

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