<……分から、ない……> ページ30
「A!」
「危ない!ラビ、近づいちゃだめだ!」
必死に手を伸ばすラビを押さえつけるのはほかでもないコムイだ。
そんな彼らの目の前で、Aはまるで渦のようなものに飲み込まれた。
悲鳴もなく、
動くこともなく、
今は渦のせいで彼女の姿は視認できない。
無事かどうかの確認さえ出来ない。
ヘブラスカにも、今どういう状況なのかはっきりと識別できないのか、その口を噤んだままだ。
「離せ!Aが、」
「ラビ」
名前を一度呼んだだけ。
それなのに、ぴたりとラビは動かなくなる。
抵抗をやめ、コムイもやがてラビを解放した。
俯いたまま動かないラビを、ブックマンはもう一度呼ぶ。
そうすれば、ゆっくりと踵を返し、元いた位置に戻る。
そんな彼の様子を、ブックマンはただずっと見つめていた。
その意味深そうな彼の表情の意図を知るものは、誰もいないのだけれど。
<……!>
やがてついにヘブラスカが反応を見せる。
だが常に無表情な故に、それが吉か凶かは分からないでいた。
「いったいどうなったんだ、ヘブラスカ!?」
そう問うコムイの顔は心なしか青い。
彼は思いだしているのだろう。
昔、人体実験に立ち会ったあの時のことを……
そして、その被験者たちの末路を。
<……分から、ない……>
それが、ヘブラスカの答えだった。
そう答えられては、コムイたちも出来る術はない。
ただ、少なくとも咎落ちは免れたということだろうか。
それでも安心はできない。
そんな思考が、彼らの中で錯誤していた。
「いったい、どういうことなんさ?」
先程よりも冷静さを取り戻したラビが問う。
だが、彼の拳はきつく握りしめられ、辛うじて冷静を演じているという風にも見えた。
額からは汗が伝い、彼の内心は穏やかではないのだろうということが伺える。
<……咎落ちでは、ない……結晶型にもなってない……>
「じゃあ成功したんじゃねぇのかよ!?」
そのリーバーの台詞に、だけどヘブラスカは何も答えない。
ただ、じっといまだに激しく音を鳴らしている渦を見つめるだけだ。
その中のAの様子は、ヘブラスカ以外には誰も見ることはできない。
それどころか、ひょっとしたらヘブラスカにも分かっていないのかもしれない。
だが、その場にいる誰もが一心でAの無事を願っていた。
彼女が来てまだ間もないが、
彼女の幼さが故の純粋さや明るさ、彼女がもたらした変化、そのすべてに
教団にいる誰もが、彼女を仲間だと認めざるを得なかったのだ。
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∧∧ネコミミ∧∧@玉ねぎ@オニマス(プロフ) - mo-taさん» 面白いですかありがとうございます!もう4冊目なのでなんでこんな長引いてるんだよ!と茶舞台ひっくり返したい思いです! (2014年9月6日 12時) (レス) id: d6bef4f0e5 (このIDを非表示/違反報告)
mo-ta - どうも!mo-taです。この作品すごく面白いと思います!!更新楽しみにしてます! (2014年8月23日 6時) (レス) id: 58b0bd4753 (このIDを非表示/違反報告)
∧∧ネコミミ∧∧@玉ねぎ@オニマス(プロフ) - 銀来さん» お久しぶりです!またコメくださって本当に嬉しいです!クロちゃん格好良くしたいっていうかどんなキャラも格好良くしたい( (2014年8月11日 19時) (レス) id: d4f6060cfe (このIDを非表示/違反報告)
銀来(プロフ) - お久しぶり(?)です!ク、クロちゃんが...クロちゃんがカッコ良く見えましたΣ(゚д゚lll) (2014年8月11日 8時) (レス) id: 578c57ad6f (このIDを非表示/違反報告)
∧∧ネコミミ∧∧@玉ねぎ@オニマス(プロフ) - 銀来さん» 大好きだなんて嬉しい言葉をありがとうございます。他の作品も御閲覧していただいてるなんて頭が上がりません…!ありがとうございます、頑張らせていただきますッ (2014年8月7日 15時) (レス) id: d4f6060cfe (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:∧∧ネコミミ∧∧ | 作者ホームページ:
作成日時:2014年5月18日 18時