【D.gray-man】 Sorry but Goodbye -Terzo-

「出来ることならすべて、やる」 ページ27

「……そんな、慌てて何とかなるもんじゃないさ。 俺らだって一日二日でここまでたどり着いたわけじゃ……」
「じゃあ待てって言うの？みんながどんどん先行ってるのに、私一人でゆっくりちまちま地道に行けって？」

追いつかない、追いつかない、追いつきたい、追いつきたい。

イノセンスを手に入れた瞬間から私の夢だった、エクソシストになること。
クロス師匠に匙を投げられても、自分に匙を投げることだけは絶対にしなかった。
諦めの悪さだけで、あの日ここまでたどり着いた。
ついに夢を叶えた。

だけどそのまま、愕然とする。
上には上がいる。
その言葉の通り、私は目の前のみんなの姿を見て目を見開いた。

何でもないような顔をして、私に出来ないことをやってのける。
出来て当たり前という余裕さで、やってのける。
まるで私がいつまでたっても落ちこぼれなのだと思い知らせるためにやっているかのようだ。

強くなりたい。
今、この瞬間。この時間、この一分間この一秒間、の間で
皆に追いつきたい。
私も余裕でAKUMAを倒したい。

「今じゃなきゃダメなんだ。 今じゃなきゃいつまで経っても落ちこぼれたまま。 じゃあみんなは、私がみんなに追いつくまで待っててくれるの？」

ラビが口を噤む。
彼だって分かってるはずだ。

階段の先を歩んでる彼ら。
私がいま彼らのいるところに追いつくころには、彼らの姿はとっくに向こう側にある。
目もくらむような光の中、一緒に階段をのぼる仲間たちと笑いあってる。
たくましい背中、強い心と強靭な体をもって。

そして私は、いつまでも一人で階段をのぼり続ける。
一人ぼっちで、あの背中たちを追いかけて。
そしていつまで経っても、どれだけ手を伸ばしても、あの背中に手が届くことは
きっとなくて――……

一筋の涙が、私の頬を零れ落ちた。
嗚咽の伴わない涙。
それは私の覚悟だ。

「……力が、欲しい。 だから私は……出来ることならすべて、やる」

それがたとえ私の命を賭したとしても。

「大体エクソシストになった時点で、私は……私の命は、賭されていた」

少しの恐怖を抱いたとしても、死ぬことはきっと厭わない。
多少の犠牲なしには、勝利は得られないのだから。

そして私はヘブラスカに向き直る。
もう、言葉は必要のない気がした。

やがてヘブラスカが行動を起こす。
私に向かって、触手の塊を差し出した。
まるで手のひらのような塊の中心には、ずっと恋焦がれていたもの。

私のイノセンスが、そこにはあった。

取り戻してやる。→←まだ、追いつかない。

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