「イノセンスがなければ、私は生きてはいけないんです」 ページ25
「……そこでね、大元帥たちがたどり着いた答えが」
コムイさんがなんだか歯切り悪そうだ。
言いづらそうに数度口ごもる。
眉根も深く寄せられ、どうにも言いやすい話ではなさそうだ。
それでも私は覚悟はできている。
たとえ何があろうと、私は挫けてはいけないのだと教えてもらった。
寧ろお前みたいなごみ虫には挫ける資格すらないのだとクロス師匠が言っていた。
今でもあの教訓根付いてる。
「……大丈夫です、コムイさん。 言ってください」
私がコムイさんを真っ直ぐに見つめ、先を促した。
だけどその目を、コムイさんは逸らす。
代わりに、ヘブラスカが動きを見せる。
＜……お前に、イノセンスを入れる＞
「……え？」
大きな物音が聞こえた。
振り返ればそれはラビだ。
少し青白い顔で、口を真一文字に結び信じられないというような顔つきでヘブラスカを見ている。
目を見開き、頬に汗が伝ったのが見えた。
「ちょ、待て……それって！」
「ラビ、黙っておれ！」
ブックマンさんの一喝でラビは押し黙る。
だが歯を食いしばるその姿だけでわかった。
咎落ちのように、クロス師匠から聞いた話で思い出した。
そうだ、聞いたことがある。
その名は確か、人造使徒計画。
イノセンス適合者を人工的に作り出す計画。
エクソシストの血縁者に無理矢理イノセンスを入れる実験。
確か成功者はおらず、誰もが咎落ちに終わったはず……。
へたりと足の力が抜けて、私は地面に座り込んだ。
ラビが、弱々しい声で私の名を呼んだのが聞こえた。
何もかもが遠くなっていくような気がした。
ただ、頭の中の思考だけが鮮明になっていく。
私は、これから咎落ちになるのだろうか。
……でも、あの計画の被験者は皆ただの血縁者で、イノセンスを持ったことのない者たち……
ならば、元エクソシストである私が行えばどうなる？
助かる可能性が見つかるのだろうか。
イノセンスを手に入れられたとしても……咎落ちしてしまえば、それまで……
真っ白になった頭で考える。
ぎり、と床についた手に力が籠もる。
――私は何故今、笑っているのだろう。
……今以上に、自分がトチ狂っていると自覚したことはない。
それでも、と私はヘブラスカから視線を逸らさず立ち上がる。
そんな私の瞳に狂気を感じ取ったのか、ヘブラスカが少し動揺した。
「……やります」
「A！？」
ラビの声。
心配してくれてるんだ、止めてくれるんだ、でも。
「イノセンスがなければ、私は生きてはいけないんです」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 38人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「アニメ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
∧∧ﾈｺﾐﾐ∧∧@玉ねぎ@オニマス(プロフ) - mo-taさん» 面白いですかありがとうございます！もう4冊目なのでなんでこんな長引いてるんだよ！と茶舞台ひっくり返したい思いです！ (2014年9月6日 12時) (
レス) id: d6bef4f0e5 (このIDを非表示/違反報告)
mo-ta - どうも！mo-taです。この作品すごく面白いと思います！！更新楽しみにしてます！ (2014年8月23日 6時) (レス) id: 58b0bd4753 (このIDを非表示/違反報告)
∧∧ﾈｺﾐﾐ∧∧@玉ねぎ@オニマス(プロフ) - 銀来さん» お久しぶりです！またコメくださって本当に嬉しいです！クロちゃん格好良くしたいっていうかどんなキャラも格好良くしたい（ (2014年8月11日 19時) (レス) id: d4f6060cfe (このIDを非表示/違反報告)
銀来(プロフ) - お久しぶり(？)です！ク、クロちゃんが．．．クロちゃんがカッコ良く見えましたΣ(ﾟдﾟlll) (2014年8月11日 8時) (レス) id: 578c57ad6f (このIDを非表示/違反報告)
∧∧ﾈｺﾐﾐ∧∧@玉ねぎ@オニマス(プロフ) - 銀来さん» 大好きだなんて嬉しい言葉をありがとうございます。他の作品も御閲覧していただいてるなんて頭が上がりません…！ありがとうございます、頑張らせていただきますッ (2014年8月7日 15時) (レス) id: d4f6060cfe (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：∧∧ﾈｺﾐﾐ∧∧ | 作者ホームページ：
作成日時：2014年5月18日 18時
