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「……ラビ、まさか」 ページ22

「よっしゃ行くぞ!」
「うん、私が悪かったんだね。 帰ろうって話題に入った時素直に「どうやって帰るつもりなの?」って聞けばよかったね。 本当」
「……」

荷物を持ったまま私たちは崖の上に立っている。
駅から数分歩いた先の崖だ。
今、ガラリと崖の破片が落ちていった。

「……ねぇ、落ちた音が聞こえないよ」
「それだけこの崖が深いってことさ」
「言うなよ!ねぇ、気にしてることきっぱり言うなよ!」

足がすでに震えていて、カイトの手を握っている手も汗ばんでいる。
申し訳なさに手を離したいけど、カイトも無言で青ざめていて私の手を一向に離さない。
きっとカイトの手も結構汗ばんでる。

「大丈夫大丈夫、別に飛び降りるわけじゃねぇさ」
「飛び降りるくらいだったら私は徒歩で帰るね」
「一ヵ月くらいかかるかもだぞ」
「それだけの価値がある」

私は今まったく冗談を言っていない。
これ以上ないほど本気だ。

「……お姉ちゃん」
「ん?」

カイトの手が震えている。
大変だ、こんな幼い子供にトラウマを植え付けてしまったかもしれない。
彼のトラウマを背負えるほど私は責任に強くない。

「……僕たち、死ぬの?」
「死なないよ!帰るんだよ!」

この子の怯え方と言ったら。
本当に心中するんだと思っているのか、涙目で暗闇しか見えない崖下を見つめながら震えている。
その瞳は、おそらく私達には見えない何かを見つめているんだろう。
お花畑と川とか。

「ってかラビ、それならどう帰るの?」
「こいつ使うんさ」

そういってラビは、自らのイノセンスである小槌を取り出した。
そしていつも通り、満という単語を繰り返し呟くたびにそれは大きくなる。
隣でカイトが、驚きに息をのむのが聞こえた。

「よし、んでここに跨れ」

まるで魔女の箒のように、柄に跨る。
ラビと私の間にカイトを挟むようにして座り、つまり私は一番後ろ、槌に近い部分だ。
カイトをしっかり支えるように、と言われてからようやく嫌な予感がし始める。

「……ラビ、まさか」
「あ、Aちゃんと振り落とされないように俺の服持ってるさ」

さっと全身の血が抜けていく感覚。
今私は驚くほど青ざめているんだとよくわかった。
ようやく冷汗が全身から溢れ、手足が震えだす。

「……ラビ?」
「そうそう、そんな感じで」

ラビの腹に手を回しながら、恐る恐るラビの名前を呼ぶ。
聞こえてるはずなのに、ラビは返事をしてくれない。

そしてついに、

「伸!」

響く私の悲鳴。

「ついてきて」→←「一緒に行こう?」



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作品ジャンル:アニメ
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∧∧ネコミミ∧∧@玉ねぎ@オニマス(プロフ) - mo-taさん» 面白いですかありがとうございます!もう4冊目なのでなんでこんな長引いてるんだよ!と茶舞台ひっくり返したい思いです! (2014年9月6日 12時) (レス) id: d6bef4f0e5 (このIDを非表示/違反報告)
mo-ta - どうも!mo-taです。この作品すごく面白いと思います!!更新楽しみにしてます! (2014年8月23日 6時) (レス) id: 58b0bd4753 (このIDを非表示/違反報告)
∧∧ネコミミ∧∧@玉ねぎ@オニマス(プロフ) - 銀来さん» お久しぶりです!またコメくださって本当に嬉しいです!クロちゃん格好良くしたいっていうかどんなキャラも格好良くしたい( (2014年8月11日 19時) (レス) id: d4f6060cfe (このIDを非表示/違反報告)
銀来(プロフ) - お久しぶり(?)です!ク、クロちゃんが...クロちゃんがカッコ良く見えましたΣ(゚д゚lll) (2014年8月11日 8時) (レス) id: 578c57ad6f (このIDを非表示/違反報告)
∧∧ネコミミ∧∧@玉ねぎ@オニマス(プロフ) - 銀来さん» 大好きだなんて嬉しい言葉をありがとうございます。他の作品も御閲覧していただいてるなんて頭が上がりません…!ありがとうございます、頑張らせていただきますッ (2014年8月7日 15時) (レス) id: d4f6060cfe (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:∧∧ネコミミ∧∧ | 作者ホームページ:   
作成日時:2014年5月18日 18時

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