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「……君のパパママは、いい人だったんだね」 ページ20

呟くように言われた言葉に、私はふ、と微笑んだ。
予想通りの答えだ。
やっぱり、両親思いのいい子なんだろうな。

だが、その分この子は苦しむ。
そしてこの先も、幾度となく苦しみ、涙することになる。

……私たちが救ってやれなかったから。

「……君のパパママは、いい人だったんだね」
「……」

再び、嗚咽が聞こえる。
また泣き出してしまったことに、私は笑みを携えたまま目を閉じる。
そしてまるで音楽を聴くように、その子の嗚咽に耳を傾けた。

今は、好きなだけ泣かせてやりたい。
いつかはその涙を、止めなきゃいけないことは知っている。
だけど、大切な人を失った悲しみは、一日二日でなおるものなどではない。
何日も何日も、長い歳月をかけて……ようやく、「慣れて」いくものだから。

「じゃあそんな二人は、きっと今も君の傍で君を心配してるよ?」
「……」
「ずっと泣いてる君を見て、パパママも苦しんでる。 君が泣いてるから、パパママは安心できない」
「ッ……」

返事はない。
嗚咽だけが淡々と、部屋の中に響き渡る。

気付けばいつの間にか、ラビは部屋の外に出ていた。
個室の扉は完全に閉め切られ、私達だけの世界になっていた。

「パパママが君のためにしたことは、君を泣かせるため?」
「………………ぅ」
「ん?」
「……」

再び黙りこくる。
だけど私は待つ。
この子が自分の口で、私に伝えなければいけない。

そうでなければ、強くなれない。

「ちが、う……」
「そうだよね。 二人は、君の笑った顔が見たいんだよね」
「……パパ、も、ママっ……も、っく、ぼ、ぼくの……」

嗚咽交じりの言葉。
ようやく自分の言葉をきかせてくれた。
それはつまり、私に対しての警戒を解いたという意味。

まずは第一関門を突破したことに、私は胸を撫で下ろした。

「え、えがおが、すき……だって、言ってっ……た」
「そう。 じゃあ君は、優しいパパママに笑ってあげないの?」
「だって……だっ、って……」

泣き止むことは簡単じゃない。
特に号泣した後のしゃっくりは酷くて苦しい。
それは、泣き虫だった私が一番よく理解していた。

この子には時間が必要だと、何度目かの考えが頭をよぎる。
今はいっぱい泣いてほしい。
止まない雨はない。癒せない傷はない。
そこに傷跡は残り、時に痛むことはあれど……

その痛みの分だけ、強くなれることを私が何より知っているから。

「天国にいるママとパパに、胸張って会えるように」

そんな生き方を。

「一緒に行こう?」→←「大丈夫だよ」



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作品ジャンル:アニメ
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∧∧ネコミミ∧∧@玉ねぎ@オニマス(プロフ) - mo-taさん» 面白いですかありがとうございます!もう4冊目なのでなんでこんな長引いてるんだよ!と茶舞台ひっくり返したい思いです! (2014年9月6日 12時) (レス) id: d6bef4f0e5 (このIDを非表示/違反報告)
mo-ta - どうも!mo-taです。この作品すごく面白いと思います!!更新楽しみにしてます! (2014年8月23日 6時) (レス) id: 58b0bd4753 (このIDを非表示/違反報告)
∧∧ネコミミ∧∧@玉ねぎ@オニマス(プロフ) - 銀来さん» お久しぶりです!またコメくださって本当に嬉しいです!クロちゃん格好良くしたいっていうかどんなキャラも格好良くしたい( (2014年8月11日 19時) (レス) id: d4f6060cfe (このIDを非表示/違反報告)
銀来(プロフ) - お久しぶり(?)です!ク、クロちゃんが...クロちゃんがカッコ良く見えましたΣ(゚д゚lll) (2014年8月11日 8時) (レス) id: 578c57ad6f (このIDを非表示/違反報告)
∧∧ネコミミ∧∧@玉ねぎ@オニマス(プロフ) - 銀来さん» 大好きだなんて嬉しい言葉をありがとうございます。他の作品も御閲覧していただいてるなんて頭が上がりません…!ありがとうございます、頑張らせていただきますッ (2014年8月7日 15時) (レス) id: d4f6060cfe (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:∧∧ネコミミ∧∧ | 作者ホームページ:   
作成日時:2014年5月18日 18時

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