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「大丈夫だよ」 ページ19

「……助けに来れなくて、ごめんね」

自分の無力さに反吐が出る。
悔しさに、虚しさに、周りのものを暴れ狂いながら壊してしまいたい衝動に駆られる。
だけどそんな甘やかされたことはできない。

今一番苦しいのは、無力にも自分の両親が死んでいくところを見届けた、彼なのだから。

暫くして、静かな部屋の中でしゃくりだす音が聞こえた。
そのしゃっくり一つ一つが、私の悲しさを増幅させた。

「……行ってやれ」

ラビが、私の背中を叩く。
それに押され、一歩二歩と私はたたらを踏む。
ラビを振り返れば、いつもの人懐こそうな笑みではなく、どことなく悲しそうな笑みを浮かべていた。

「俺は子供の扱いには長けてないんさ」

そう苦笑するラビは、一体どれほどの惨劇を見てきたのだろうか。
そしてそのうちのどれほどの惨劇が、自分にとって「防げたもの」だったのだろうか。
私のこの感情は、エクソシストたちにとっては序の口なんだ。
この胸の、息苦しさも……すべて、彼らは経験してきた。
乗り越えてきた。

私も……早く彼らに追いつかなければ。
置いて行かれてしまう。
置いて行かれて、しまう。

「大丈夫だよ」

ベッドの下に隠れているのはわかっている。
私はベッドサイドにしゃがみ込み、膝を抱え込んだ。

今でもしゃっくりの音は止まない。
今でもこの子は、悲しみに心を苛んでいる。
そしてその悲しみを掬わなきゃいけないのが、私なんだ。

「お母さんから、死んだ人はどこに行くのって聞いたことがある?」
「……」
「私は知らなかったんだ。 最近読んだ本で、死者は天国に行くんだって知ったんだよ」

膝を抱きながら優しい声で語り掛ける。
声はゆっくりと安定させ、落ち着かせるように緩やかなイメージで。
ただ、全身の意識をその子に集中させた。

今一番苦しいのはこの子だ。
この子が今何を欲しがっているのか。
私は何を与えるべきか。

あの時、ラビとの初任務のように、うまく言葉が出てこない。
私はうまくやれているだろうか。

「君のお母さんはいい人?お父さんは?悪いことをしたら地獄に行くんだって。 君のパパママは、どこに行ったと思う?」

優しい声音。
まるで自分の心を溶かすような、そんな声。

静寂が流れて、それでも私は答えを待つ。
急かしちゃいけない。
ゆっくりゆっくり、この子が私に慣れるのを待つ。

まるで砂時計の中のようにゆっくりと時間が流れる。
ありもしない砂音に耳を傾けながら、私は待った。

「……天国」

「……君のパパママは、いい人だったんだね」→←「……うん、お願い」



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作品ジャンル:アニメ
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∧∧ネコミミ∧∧@玉ねぎ@オニマス(プロフ) - mo-taさん» 面白いですかありがとうございます!もう4冊目なのでなんでこんな長引いてるんだよ!と茶舞台ひっくり返したい思いです! (2014年9月6日 12時) (レス) id: d6bef4f0e5 (このIDを非表示/違反報告)
mo-ta - どうも!mo-taです。この作品すごく面白いと思います!!更新楽しみにしてます! (2014年8月23日 6時) (レス) id: 58b0bd4753 (このIDを非表示/違反報告)
∧∧ネコミミ∧∧@玉ねぎ@オニマス(プロフ) - 銀来さん» お久しぶりです!またコメくださって本当に嬉しいです!クロちゃん格好良くしたいっていうかどんなキャラも格好良くしたい( (2014年8月11日 19時) (レス) id: d4f6060cfe (このIDを非表示/違反報告)
銀来(プロフ) - お久しぶり(?)です!ク、クロちゃんが...クロちゃんがカッコ良く見えましたΣ(゚д゚lll) (2014年8月11日 8時) (レス) id: 578c57ad6f (このIDを非表示/違反報告)
∧∧ネコミミ∧∧@玉ねぎ@オニマス(プロフ) - 銀来さん» 大好きだなんて嬉しい言葉をありがとうございます。他の作品も御閲覧していただいてるなんて頭が上がりません…!ありがとうございます、頑張らせていただきますッ (2014年8月7日 15時) (レス) id: d4f6060cfe (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:∧∧ネコミミ∧∧ | 作者ホームページ:   
作成日時:2014年5月18日 18時

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