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「いつから私が寝ていると錯覚していた?」 ページ17

「……A」

心配そうなラビの声。
そんな彼に、私は振り返りざま笑みを送る。

「殺してないよ」
「……え」
「さっき名前呼んだの、私がこいつを殺すと思ってたでしょ?」
「……そりゃあそうさ……あんな殺気で」

呆気な顔をしたままのラビに、私はナイフを再び袖口に隠す。
そしてしゃがみ込み、頬をつついた。
反応がないから、少し髪の毛を引っ張ってみる。
そして聞こえるうめき声。

「ほら、生きてるでしょ?」
「……ビビったさぁ……」

力が抜けたようにへなへなと歩み寄ってくるラビ。
そんなラビがおかしくて、つい笑ってしまった。
笑うなって軽く頭を叩かれたけど。

「っつかさっきの動きすごい滑らかだったさ」
「そう?火事場の馬鹿力ってやつだよきっと。 それでも戦闘センスはないでしょ?」
「……え」

ぎくりと固まるラビ。
あえて目を逸らし、口端をゆがめるだけの笑みを浮かべる。
こういう笑みをすると、なんだかちょっと怖い印象が出るのはもう実証済みだ。

「き、聞いてたんさ?」
「いつから私が寝ていると錯覚していた?」
「それ漂白剤がタイトルのアニメのキャラの名言さ!?」

慌てるラビに再び笑い出す。
さっきまで戦闘していたというのに、この和みようは自分でも自覚するけどおかしい。
それでも簡単にこの笑いを止められそうにはなかった。

「いや……まぁ、もうちょっと早く動けてたら俺らとも互角に戦えるくらいだったさ」
「あれが私の限界だよ。 ほら、筋肉ビキビキ言ってる」
「グロッ」

実際に、まるで痺れたように足腕の筋肉が痛む。
少しも動かしたくないせいで、私は今床に座り込み、太ももの上に腕を休めている。
そうでもして休めないと、痛みが響く。
そして何より、

「私拳銃で撃たれてるんだよねそういえば」
「だからもうちょっと痛がれ!」

腕を流れ落ちる鮮血を眺めながら何ともない風に言えば、慌てるラビ。
もしやこいつ、忘れていたな?
私も結構忘れてたけど。

本当に何かに意識を向けているときは、痛みさえ忘れられるんだな。
どこかの小説に載ってはいたが、本当だとは思わなかった。
そうじゃなくとも、私は痛みには強いけど。

「――……どうする?」
「ん?」
「これから」

壁元の血飛沫にちらりと視線を寄越せば、ラビは小さな声で「あぁ……」と呟いた。
出来ればもう、こんな汽車には一刻もいたくない。
でも、せめて彼らを弔ってやりたい。

マイナスな感情がせめぎ合って、私は思わず無言になった。

「……うん、お願い」→←「――……堕ちろ」



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作品ジャンル:アニメ
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∧∧ネコミミ∧∧@玉ねぎ@オニマス(プロフ) - mo-taさん» 面白いですかありがとうございます!もう4冊目なのでなんでこんな長引いてるんだよ!と茶舞台ひっくり返したい思いです! (2014年9月6日 12時) (レス) id: d6bef4f0e5 (このIDを非表示/違反報告)
mo-ta - どうも!mo-taです。この作品すごく面白いと思います!!更新楽しみにしてます! (2014年8月23日 6時) (レス) id: 58b0bd4753 (このIDを非表示/違反報告)
∧∧ネコミミ∧∧@玉ねぎ@オニマス(プロフ) - 銀来さん» お久しぶりです!またコメくださって本当に嬉しいです!クロちゃん格好良くしたいっていうかどんなキャラも格好良くしたい( (2014年8月11日 19時) (レス) id: d4f6060cfe (このIDを非表示/違反報告)
銀来(プロフ) - お久しぶり(?)です!ク、クロちゃんが...クロちゃんがカッコ良く見えましたΣ(゚д゚lll) (2014年8月11日 8時) (レス) id: 578c57ad6f (このIDを非表示/違反報告)
∧∧ネコミミ∧∧@玉ねぎ@オニマス(プロフ) - 銀来さん» 大好きだなんて嬉しい言葉をありがとうございます。他の作品も御閲覧していただいてるなんて頭が上がりません…!ありがとうございます、頑張らせていただきますッ (2014年8月7日 15時) (レス) id: d4f6060cfe (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:∧∧ネコミミ∧∧ | 作者ホームページ:   
作成日時:2014年5月18日 18時

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