「――……堕ちろ」 ページ16
落ちろ
堕ちろ
墜ちろ、
「――……堕ちろ」
ナイフをフリップさせ、そのナイフの柄を男の額に直撃させる。
目を見開いままの男は、突然襲った痛みに額を抑えながら叫ぶ。
「ぐっう……貴様ぁ!」
ふと、彼の姿が昨日の親子連れの父親を連想させた。
楽しそうに笑っていた子供、その手をしっかり握り笑い返す父親。そして夕飯時に見た、優しい笑み浮かべた母親。
そんな姿を見て、「家族っていいね」だなんてラビと頷き合ったりもした。
もう見れない。
もう、見れない。
彼らはもう、この世にはいない――
その事実が、私の殺意をさらに駆り立てる。
頭の中だけが冷静に、ただ一つのことを理解していた。
私はこの男を絶対に、赦してはいけない。
この男に反撃の隙を与えない。
すぐに身を翻し、今度は右手のナイフをフリップさせ、柄を頬に叩きこむ。
その拍子に口の中が切れたのか、倒れる男の口からは血が零れていた。
「……どうして」
床に這いつくばり、慌てて体制を整えようとしている男を見下ろす。
無様なその格好を、普段の私では想像も出来なさそうなほど無表情な顔で見下ろす。
零れ出たのはその言葉。
相変わらず、冷淡な声。
どうして。
何も思わなかったのか?
同じ人間が、叫び悲鳴をあげ、必死に助かろうとする姿を見て
何も思わなかったのか?
そこまで、金に執着しなきゃいけない理由でもあるのか。
金がなんだっていうんだ。
確かに金さえあれば、なんでも出来るといっても過言ではない。
それでも、だけど、だけれども……
違うだろう。
金だけのためにこんなことを出来るほど、人の貪欲さは果てを知らないのか。
「っ……」
顔をくしゃりと歪める。
歪んだ視界の中、ゆらりと立ち上がった男の姿が見えた。
銃を構えたのを視界でとらえた瞬間、ずぐりと撃たれた傷が熱を持つ。
痛みさえ忘れるほどの、殺したいという強い思い。
足を踏み込む。
一歩、もう一歩先へ。
リーチ……、あと少しで届く。
あぁ、もう手を伸ばせば届く。
そこで、踏み込んだ右足に力を籠める。
真っ先に自分のもとへ向かうと思っていた男は、驚きに固まる。
その銃は、もう発砲準備が整っていた。
右に回る。
急に方向転換をしたせいか体が重い。
ラビたちのような、一瞬で背後に回るだなんてことはできないけれど、混乱している男に対しこれで十分だった。
彼の首元にナイフを突きつける。
その瞬間聞こえた叫び。
「A!」
男は、床に崩れ落ちた。
「いつから私が寝ていると錯覚していた?」→←<暴れてるのは、一つのイノセンスだ……>
38人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「アニメ」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
∧∧ネコミミ∧∧@玉ねぎ@オニマス(プロフ) - mo-taさん» 面白いですかありがとうございます!もう4冊目なのでなんでこんな長引いてるんだよ!と茶舞台ひっくり返したい思いです! (2014年9月6日 12時) (レス) id: d6bef4f0e5 (このIDを非表示/違反報告)
mo-ta - どうも!mo-taです。この作品すごく面白いと思います!!更新楽しみにしてます! (2014年8月23日 6時) (レス) id: 58b0bd4753 (このIDを非表示/違反報告)
∧∧ネコミミ∧∧@玉ねぎ@オニマス(プロフ) - 銀来さん» お久しぶりです!またコメくださって本当に嬉しいです!クロちゃん格好良くしたいっていうかどんなキャラも格好良くしたい( (2014年8月11日 19時) (レス) id: d4f6060cfe (このIDを非表示/違反報告)
銀来(プロフ) - お久しぶり(?)です!ク、クロちゃんが...クロちゃんがカッコ良く見えましたΣ(゚д゚lll) (2014年8月11日 8時) (レス) id: 578c57ad6f (このIDを非表示/違反報告)
∧∧ネコミミ∧∧@玉ねぎ@オニマス(プロフ) - 銀来さん» 大好きだなんて嬉しい言葉をありがとうございます。他の作品も御閲覧していただいてるなんて頭が上がりません…!ありがとうございます、頑張らせていただきますッ (2014年8月7日 15時) (レス) id: d4f6060cfe (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:∧∧ネコミミ∧∧ | 作者ホームページ:
作成日時:2014年5月18日 18時