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頼むから、無事であって。 ページ12

「一件落着さぁ」
「まだそうとは言えないって。 これで全部だと思う?」
「さぁな。 レベル2以上が潜んでない限り、全部だと思うさ」
「どうしてそう思うの?」
「レベル1は、知性がねぇからな」

そういってラビは、バンダナで隠されたこめかみを、人差し指で叩く。
その行為と言葉に、成程と頷く。

知性がないレベル1は、ただ単純に殺戮を繰り返す。
それはおそらく千年伯爵よりインプットされたデータ。
人を殺すことでAKUMAを増やし、そしてどんどん繰り返す。
やがて混沌の世界が訪れ、人類は絶滅に陥りAKUMAは増殖する。
それを止めるのか、エクソシストの仕事……。

血が、騒ぐ。
AKUMAの弾丸の残骸だらけの床を見つめながら、拳を握りしめた。
エクソシストとしての血が騒ぐ。

AKUMAを、壊したい。

突然降り注いだ欲に、私は僅かばかりに混乱していた。
私に、こんな汚くてどす黒い破壊願望があるだなんて。

「……A?」
「……あ、何?」
「どうしたんさ?」
「何にもない……。 あ、そういえば……」

ふとあたりを見回した。
AKUMAの残骸以外には、何も見当たらない。
焼け焦げた汽車はいまだに規則正しく揺れていた。

「……ここの汽車の、もともとの乗客たちはどうなってるの?」
「……!そういえばそうさ」

ここはいわば閉鎖空間だ。
動き続ける汽車の中。昨夜8時から今まで一度も駅に止まってないことを考えれば、普通の人間がこの汽車から出入りすることは不可能である。
ならば昨日の乗客たちは?
昨日の親子連れは?
どうして大量のAKUMAが出現したというのに、誰もいない?

まさか、と嫌な予感がする。
慌ててラビを見上げれば、ラビも焦燥の色を宿していた。

「……行くぞ、A!」
「うん!」

主語なしでも、ラビの言いたいことは理解できた。
走り出したラビを追いかけるように、私も走り出す。
真っ先に階段を降り、客室のほうへ駆けだした。

此処に来るまでに荒れた痕跡は見つからなかった。
そしてもちろん血の跡も。

だけどあぁ、どうして気付かなかったんだろう。
私達の客室からこの食堂へ来るまでの間、私達は
誰ともすれ違わなかった――……

頼むから、頼むから……
思い違いであってくれ。
考えすぎであってくれ。

ただ一心にそんなことを思いながら長い廊下を走る。
一秒一秒が限りなく長い気がした。
長さは変わっていないはずの廊下が、果てしないように思えた。

焦燥。

それだけが私とラビを苛む。

頼むから、無事であって。

「……ブローカー」→←「安らかに眠れ、魂よ――」



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作品ジャンル:アニメ
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∧∧ネコミミ∧∧@玉ねぎ@オニマス(プロフ) - mo-taさん» 面白いですかありがとうございます!もう4冊目なのでなんでこんな長引いてるんだよ!と茶舞台ひっくり返したい思いです! (2014年9月6日 12時) (レス) id: d6bef4f0e5 (このIDを非表示/違反報告)
mo-ta - どうも!mo-taです。この作品すごく面白いと思います!!更新楽しみにしてます! (2014年8月23日 6時) (レス) id: 58b0bd4753 (このIDを非表示/違反報告)
∧∧ネコミミ∧∧@玉ねぎ@オニマス(プロフ) - 銀来さん» お久しぶりです!またコメくださって本当に嬉しいです!クロちゃん格好良くしたいっていうかどんなキャラも格好良くしたい( (2014年8月11日 19時) (レス) id: d4f6060cfe (このIDを非表示/違反報告)
銀来(プロフ) - お久しぶり(?)です!ク、クロちゃんが...クロちゃんがカッコ良く見えましたΣ(゚д゚lll) (2014年8月11日 8時) (レス) id: 578c57ad6f (このIDを非表示/違反報告)
∧∧ネコミミ∧∧@玉ねぎ@オニマス(プロフ) - 銀来さん» 大好きだなんて嬉しい言葉をありがとうございます。他の作品も御閲覧していただいてるなんて頭が上がりません…!ありがとうございます、頑張らせていただきますッ (2014年8月7日 15時) (レス) id: d4f6060cfe (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:∧∧ネコミミ∧∧ | 作者ホームページ:   
作成日時:2014年5月18日 18時

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