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「安らかに眠れ、魂よ――」 ページ11

足を少し右に動かせば、鉄のようなものが鉄のようなものとぶつかる金属音がした。
床を見れば、バラバラになったAKUMAの弾丸がいくつも転がっていた。

「やっるー……」

背後から褒め言葉が飛んできて、私は思わず照れる。
褒められて悪い気がしないのは、誰でも同じことだろう。

「さて、ラビの出番は?」
「もうこっちは準備万端さ」
「おっけ、次四方八方から複数の弾丸が飛ぶからちょーっと待ってて?」

肘と肘を交わすようにナイフを構える。
ヒタリと切っ先が腕に当たって、動きすぎて火照った体には丁度いい。

今までの経験から推測するに、弾丸発射まであと3秒――…

「――いまだ」

体を躍らせる。
足全体に機動力を行き渡らせ、僅か一秒の遅れも許さない。

右、斜め左斜め下真下、左右左真正面斜め右斜め下真下真下――……

それぞれの弾丸を目で追うには早すぎる。
だからここで必要になるのは、聴力、それのみだ。
それと一瞬の判断力。

例えば棒を振るとき、スポーツでラケットなんかを振った時、風を切る音がする。
それは万物が、もともと地球上に存在する重力やらに逆らうことで発される音だ。
……そして、AKUMAの弾丸もまた然り。

音を聞き取れ。
次にどの弾丸が来るのか、どの順番で切り落とすのか――

最短の速度で、踊り狂え。

足裏に振動を感じるほど大きな音が響き渡る。
足元に転がるいくつものAKUMAの弾丸。
ナイフを持った両手をだらりと体の横に倒す。

体が嫌なほど火照って、激しく動かしたせいか僅かに痺れる。
額の汗をぬぐいたいけど、もう腕の力が入らない。
音もなく私はそのナイフを、袖口の中に隠す。

もう、私の仕事はこれで終わり。
……そうでしょ?

「……ラビ」
「サンキューな、A!」

背後が光る。
小さく、ラビが呟いている声。
次第にそれは大きくなっていた。

「汽車が黒こげになるんは勘弁さ」

赤い光。
そして感じた熱気に、思わず目を瞑った。
……来る。

「劫火灰燼……火判」

耳に痛みが走るほどの轟音。そしてAKUMAの醜い悲鳴。
目の前を走る朱。
それは熱を伴い、私の体を熱気で包む。
じり、とした熱気に私自身が燃えてしまいそうだ。

「やりすぎじゃない?ラビ」
「いやー、あのままだとAばっか格好いいだけだったさ」
「この汽車の修復にいくらかかると思ってるんだろうねこの人は」
「そこはヴァチカンさ」

パチパチ、と何かが爆ぜる音。
機械の軋む音を発して、AKUMAは止まる。

「安らかに眠れ、魂よ――」

頼むから、無事であって。→←「ようやく努力が報われるときが来た……!」



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作品ジャンル:アニメ
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∧∧ネコミミ∧∧@玉ねぎ@オニマス(プロフ) - mo-taさん» 面白いですかありがとうございます!もう4冊目なのでなんでこんな長引いてるんだよ!と茶舞台ひっくり返したい思いです! (2014年9月6日 12時) (レス) id: d6bef4f0e5 (このIDを非表示/違反報告)
mo-ta - どうも!mo-taです。この作品すごく面白いと思います!!更新楽しみにしてます! (2014年8月23日 6時) (レス) id: 58b0bd4753 (このIDを非表示/違反報告)
∧∧ネコミミ∧∧@玉ねぎ@オニマス(プロフ) - 銀来さん» お久しぶりです!またコメくださって本当に嬉しいです!クロちゃん格好良くしたいっていうかどんなキャラも格好良くしたい( (2014年8月11日 19時) (レス) id: d4f6060cfe (このIDを非表示/違反報告)
銀来(プロフ) - お久しぶり(?)です!ク、クロちゃんが...クロちゃんがカッコ良く見えましたΣ(゚д゚lll) (2014年8月11日 8時) (レス) id: 578c57ad6f (このIDを非表示/違反報告)
∧∧ネコミミ∧∧@玉ねぎ@オニマス(プロフ) - 銀来さん» 大好きだなんて嬉しい言葉をありがとうございます。他の作品も御閲覧していただいてるなんて頭が上がりません…!ありがとうございます、頑張らせていただきますッ (2014年8月7日 15時) (レス) id: d4f6060cfe (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:∧∧ネコミミ∧∧ | 作者ホームページ:   
作成日時:2014年5月18日 18時

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