「こ……の、優男!タラシ!」 ページ47
「う……そ……」
開いた口が塞がらないとはまさにこのことか。
私は言葉通り口をあんぐり上げながら、上昇していくクレーンを見つめた。
そのアームには確かにタグが引っかかり、まるで宙吊り状態で私が欲しいといったぬいぐるみがぶら下がっていた。
「だから言ったろ?コツがあるって」
「そ……れにしたって、そんな小さな穴に通すなんて……!」
「まぁ確かに簡単に見えるけど、実際にやるのは一日二日じゃ不可能さ」
ラビが私に向かってウィンクされると同時に、ぬいぐるみがポトリと穴へと落ちた。
そして「取り出し口」と示された場所に姿を現す。
ラビは緩やかな動きで屈みこみそのぬいぐるみをつかみ、そして私に手渡した。
それを私はいまだ呆然とした目で見つめる。
「……え」
「お前にやるために取ったんさ。 素直に受け取っとけ」
歯を見せながら笑うラビに、じわりと頬が熱るのを感じた。
慌てて俯きながら、照れ隠しにと悪態をつく。
「こ……の、優男!タラシ!」
「何さいきなり!?」
ショックを受けたような声が頭上で聞こえる。
私はラビのほうをできるだけ見ないようにしながら、いまだに私に差し出されているぬいぐるみを引っ手繰るように受け取った。
ちょうど私の身長の半分くらいのそのぬいぐるみは、柔らかくて抱き心地も最高で。
締め付けるように胸元で抱きしめ、俯かせた顔を真っ白い表面に埋める。
微かにぬいぐるみらしい、形容しがたい匂いがした。
「……ありが、とう」
普段お礼を言うときはこんなに恥ずかしくなんてないのに。
何でこんなに意識をしてしまうんだろう。
小説の中で読んだ主人公の女の子は、ぬいぐるみを受け取り嬉しそうに顔を赤らめていた。
読んだときはただ純粋に「うわーロマンチックー……」とか馬鹿らしい感想を抱いていたけど、今ようやくあの子の気持ちが理解できた。
今度もう一度あの作品を読み直そうかな。
「……おう!」
頭の上で彼が笑うのが聞こえた。
優しそうな笑みに優しそうな声。
ドクリと鼓動が高鳴る。自然に手汗を握る。
こんな感情を前に抱いたことはなかった。
静かに歯車が回りだすように、私はきっと自然に惹かれていったんだ。
誰かが前に「他人を愛すことは必然なのだ」といっていたことがある。
だけどもし、彼にもその「必然」が通用していたら、私はどれだけ苦しまずに済んだのだろう。
もし私が未来を予知できるなら、今ここで私はどうしていたのだろう。
私が彼を愛してしまったのならば。
38人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「アニメ」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
∧∧ネコミミ∧∧@元うにゃ(プロフ) - ログ@エネさん» ちょっw興奮しすぎじゃき( 読んでくれてありがとう!少しずつ二人の仲を近づけていきたい!…です( (2014年5月17日 19時) (レス) id: c31f9c6564 (このIDを非表示/違反報告)
ログ@エネ(プロフ) - おおおおお?ついに?ついに?ラビへの思いに気づくか? (2014年5月17日 0時) (レス) id: 4873300096 (このIDを非表示/違反報告)
∧∧ネコミミ∧∧@元うにゃ(プロフ) - 夏みかんさん» そんな嬉しいこと言わないでください…マジで感激で泣いちゃいますよ>< 本当にありがとうございます!いつも閲覧頂き、感謝の気持ちでいっぱいです。これからもどうかよろしくお願いします! (2014年5月12日 17時) (レス) id: c31f9c6564 (このIDを非表示/違反報告)
夏みかん - 素晴らしいです。あぁ、めっちゃ好きです!更新頑張って下さい。 (2014年5月12日 15時) (レス) id: 6748ba7e6c (このIDを非表示/違反報告)
∧∧ネコミミ∧∧@元うにゃ(プロフ) - 羽さん» 楽しませることができて光栄です!更新、頑張らせていただきますね^^ (2014年5月3日 23時) (レス) id: c31f9c6564 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:∧∧ネコミミ∧∧ | 作者ホームページ:
作成日時:2014年1月12日 15時