【D.gray-man】 Sorry but Goodbye -Secondo-

「見てろって」 ページ46

コインがチャリンと落とされるのを耳で聞きながら、ラビの指もとに集中する。
私のより骨張っていて、男らしい手。
その手が、まるでピアノでも奏でるように優雅に机上を動き回る。

「A、どれにするか決めろ」
「え、私が？」
「それ以外に誰がいるんさ？」

こういうときって、無難に一番手前とか...落ちかけてるやつとかを狙うものじゃないのかなぁ。
そう思いながら、私はガラス窓に近づき中身を見つめた。
中にはウサギや熊の可愛らしいプラッシーが所狭しと並んでいる。
どれも可愛くてどうすればいいか分からない。
というかどれもものすごくでかいわこれ...

「...どれでもいいの？」
「あぁ。 どうせどれも難易度は同じさ」
「いや流石に埋まってる人形は無理でしょ」
「二回あれば取れるぞ」
「うーん...」

ものすごく悩んでから、私は「これ」と一つの人形を指にした。
その人形は熊の形をした、巷で人気の「ショボン」というキャラクターのはずだ。
その愛嬌のある顔に、ものすごく惹かれる。
しかも一番手前にあるから、多分取りやすいだろう。

「よし、見てろ」

口元に笑みを浮かべたまま、ラビは左手を数個のボタンの上に、右手を赤くて丸い取っ手のようなものに位置させる。
そしていよいよ、ゲームは開始された。

ラビは流れるような仕草で、クレーンを操り始めた。
右手がバーを引くたびにクレーンは右へ右へと自由自在に動く。
クレーンは左から右へ操られるがままに滑らかに動き、そしてぬいぐるみの真上で止まった。

「こっからが本番さ」

不敵の笑みを浮かべたままのラビは、クレーンを睨みながら左手のボタンを弄び始める。
小さく「ここだな」という呟きが聞こえた気がして、私は一旦ラビの方へ目をそらした。

真剣な瞳に、思わず鼓動が高鳴るのが聞こえた。
真面目な瞳に不敵な笑み。この組み合わせは流石に卑怯だろ。

「...よし」

タンッという軽快な音が聞こえて、クレーンが降下し始めた。
だが、クレーンは少しばかりぬいぐるみの右へとずれている。
これじゃあぬいぐるみを擦りもしないじゃないか。

「ラビ...」
「見てろって」

思わず声をあげた私に、ラビは自信満々の声音で答えた。
「でもこれじゃあ取れないよ」という私の言葉は、その彼の様子に飲み込まれる。

ごくりと思わず生唾を飲み込みクレーンを見つめる。
クレーンがぬいぐるみに近づくが、惜しくも少し掠り地まで落ちた。
溜め息をつこうとしたその時、

アームにタグが、引っかかった。

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