134話 そばに ページ35
アシ「峰山ッ」
貴『…ッ』
アシㇼパに名を呼ばれハッとしたミツキは逡巡する気持ちを強引に振り払い、再び座席の下に潜り込んで前の車両へと進む。
白石「…あッ」
ガ リ ッ
土方に散々と斬られ怯んだのか、ヒグマは前の車両めがけてドスドスと逃げ帰って行く途中"ついでに"白石の頭へガリっと噛みついた。
貴『このッ！！』
ミツキが座席の下から刀身を出してヒグマの尻に思い切り深く突き刺すと、ヒグマはたまらず低く唸り声を上げ走り去っていく。
白石「痛゛ったぁ！！ちょっとカジっていきやがった！！」
貴『見せてください！！』
そう言いながら白石の噛まれた頭を見るが、奇跡的に多少の噛み痕と出血だけで済んでいることにミツキはホッと安堵する。
貴『…よかった…』
一通り落ち着いたと思ったその時──
「杉元佐一」
「！」
土方が今にも崩れ落ちそうな様子の中杉元の名を呼び刀を差し出す。
貴『…！！』
あの刀は…土方さんの…
どうして…
アシ「土方ニシパ…」
短く言葉を交わした後、杉元は土方の手から刀を受け取ると、ミツキ達の方へと歩を進めた。
そんな
まさかそんな
そんなわけない…
あの土方歳三がこんなところで…
貴『……ッひじかたさん…ッッ』
白石「！ミツキちゃん…」
アシ「…峰山…」
杉元「…」
土方が通路の奥で力無く崩れ落ちると同時に、ミツキは無意識に土方の側へと駆け寄ってしまっていた。
土方「…… ふ … 鼻 が 出 て い る ぞ …」
貴『…わ…ッわらわないでくださいよ……ッ』
涙と鼻水でぐちゃぐちゃの顔を土方に笑われてしまい、余計に涙がボロボロと溢れてしまう。
土方「…… いけ … ミツキ 。守るんだろう ？」
土方はそう言いミツキの顔にそっと触れ、ぐいっと頬を流れる涙を拭う。
温かくて優しいその手を、両手でぎゅっと強く握る。
貴『…っここ、に…ッ！…わ…わたしは…ここにいますから…ッ！！
だ……だから──』
──死なないで
そう口に出す前に、土方の温かい懐の中にぽすりとおさまる。
漂う鉄臭さが鼻腔をくすぐり、いやでも死を直感させる。
土方「… とんだ我儘娘だ ……
そういうところだけは 、 最初の頃と変わらんな …」
貴『…っ』
復讐じゃない目標が
やっと出来たのに…
都丹さん、谷垣さん、牛山さんに…
土方さんまで…
貴『私は…最後までここにいます…ッ』
土方「…… 本当に … あいつにそっくりだな ……」
貴『……それって…』
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作者名：ちあきんぐ | 作成日時：2024年3月12日 11時
