98話 ウワサ ページ49
海賊はそう言うとおもむろに舵を取り、兵隊達の船へと突っ込んで外輪を破壊し、そのまま強引に通り過ぎて行った。
貴『…すごい…っ』
海賊「ははーッどうだ見たかよシライシ！！ミツキちゃん！！外輪ぶっ潰せば航行不可能だろぉ！！」
白石「さすが海賊！！逃げ切ったぜ！！あははッ」
その瞬間、下からドォォンと窓ガラスの割れる音が響き、海賊の手下の一人が仲間が三人やられたことを報告した。
海賊「ああ？三人やられた？誰が殺した！？」
手下「中にいる頭のおかしい郵便配達人です！！」
海賊「よくも俺の"家臣"たちを…」
先ほどまでの気さくな雰囲気とは打って変わり、海賊は船の錨を引きずり下の船内の窓をぶち破るように振り回し始めた。
海賊「もう一丁……ん？切られた…あんたか？ミツキちゃん？」
貴『…っ』
海賊の振り回していた錨のロープを、ミツキが瞬時に刀で斬り捨てたのだ。
途中で攻撃を中断させられたおかげで殺意マシマシな表情がミツキに向けられ、海賊がズンズンと近付いてくる。
白石「ミツキちゃん！！」
杉元「おい…」
「！！」
杉元「あぶねえだろッアシㇼパさんがッ」
すんでのところで杉元が現れ、海賊の腹に拳を食い込ませる。
それから色々とやり合っていると、下からアシㇼパが駆けてきた。
アシ「杉元ッ」
杉元「アシㇼパさん！ケガはない？」
白石「杉元ッ聞きたいことがあるだろがッ」
海賊「お前…杉元っていうのか」
そこから一時的に攻撃は止み静かになった。
白石「さっき言ってた"暗号は解けない"ってウワサ…詳しく聞かせてくれ。あんたはそれを聞いて刺青人皮探しを諦めたってことなのか？」
海賊「一年ちょっと前かな…札幌で脱獄囚二十四人のひとりである若山というヤクザの親分と会った」
そこからの話は、アシㇼパが聞いた話に真実味を帯びるには十分な内容だった。
貴『やっぱりアシㇼパさんの聞き間違いじゃなかったんだ…』
白石「アシㇼパちゃんが聞いた飴売りの言葉と繋がっちまったじゃねぇか…」
杉元「うーん…」
海賊「だから俺も刺青人皮を集めるのはやめた！！」
白石「それで…アイヌが隠したっていう場所は分かったの？」
貴『…』
一番知りたかったことを、白石が代わりに尋ねてくれた。
少しの間の後、海賊は小さく首を傾ける。
海賊「……さあ。どう思う？」
流石に言わないか…
緊張を解くようにミツキは小さく溜息を吐いた。
海賊「確かに埋蔵金に近付くことは出来るが…」
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作者名：ちあきんぐ | 作成日時：2024年3月2日 7時
