91話 ゴールドラッシュ ページ42
貴『あ…そうだった…』
亜港でマキリで刺された時に貫通までしてしまい、まだ右手が上手く使えないのだ。
貴『…ぎっちょだから関係ないんだけどなぁ…』
アシ「ぎっちょ？」
平太「この時期の砂金掘りは正午の前後四時間程度しか出来ないよ。それにね、実は"板どり"は一番効率悪い採り方だよ」
白石「あんだよ〜やっぱ上手くいかねぇなあ〜」
杉元「雨竜川で一日五十円稼いだ男、なんてのもガセネタかぁ…」
杉元が冷えて赤くなった手先を息で温めながらそうぼやく。
平太「……本当ですよ、その話…だって私が稼いだんですから」
「え？！」
なんか詳しいなとは思っていたけど、まさかあの話がこの人のことだったとは…。
平太「"ハク"というのをご存知ですか？」
白石「ハクってなに？」
平太が「見せましょう」と言い、巾着を地面に広げて銀色の塊のようなものを見せてくれた。
そこからは、それが砂白金であること、最近の需要がうなぎのぼりであること、それらを今まではその辺の川に捨てていたことを平太は話してくれた。
貴『はぇ〜…』
平太「言わば…これは第二のゴールドラッシュなんですよ！！」
「…ッ！！」
ギュ…ッ
貴『…ふふ』
"第二のゴールドラッシュ"という言葉で力が入ったのか、白石と杉元は力強く手を握り合う。
その時、平太が「あ！！」と遠くの何かを見て声を上げた。
平太「またあいつだ…同じヒグマだ…ほらあそこ！こっちを見ている！！」
皆がそちらを一斉に振り返って見るが、そこには何もない。
平太「隠れてしまった……あれはウェンカムイだ…」
その後すぐにウェンカムイがいたと言う場所でヒグマを探すも、足跡すら見つけることは出来ず、諦めてそのまま作業を再開した。
杉元「あれ？オイ、平太師匠は？ひとりでどっか行ったのか？」
貴『ウェンカムイがいるかもしれないのに…危ないですね』
白石「アシㇼパちゃん！平太師匠がいなくなった！！探して見張ってて！！
あいつが熊に食われたら俺らの砂金掘りが台無しなんだから！！」
貴『はぁ…』
心配よりもそっちなのな…
ミツキは白石に呆れてため息を漏らした。
アシ「本当に熊がいるんならな…」
その後、ミツキもアシㇼパについていこうとしたが
「ここにいろ」と言われてしまう。
仕方なく火の側に座って杉元と白石が砂金掘りをする間うつらうつらとしていた。
白石「おい杉元…あれ…」
杉元「！ヒグマだ…おい、峰山！起きろ！」
貴『…ひぐま…？』
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作者名：ちあきんぐ | 作成日時：2024年3月2日 7時
