【金カム】坊主頭に興味が湧いて弐 (ページ20)

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69話　耳ページ20

白石「俺達いつまでこの亜港に滞在するの？」

キロ「もう暫くさ」

白石「亜港監獄のその女囚には、ただ面会しに行くわけじゃないんだよな？」

キロランケは少し俯いて間を置き、再び話し始める。

キロ「ソフィアを脱獄させれば、監視はソフィアを追ってくるだろう。
だから亜港監獄の囚人二百五十人を脱獄させる。それがバラバラに逃げれば、追手もソフィアに絞れない」

白石「どうやって二百五十人も一緒に逃がす？」

白石がミツキ達が疑問に思っていることをキロランケに尋ねた。

キロ「監獄の複数箇所の外壁を同時に爆破する」

白石「どこにそんな爆薬があるんだ？手に入れるのだって、あしがつくぞ」

貴『あてがあるんですか？』

ミツキと白石の問いに、「あれだ」とキロランケの指差した先には灯台が岩壁の上に佇んでいる。

アシ「あの建物は…」

キロ「灯台だ。日本がまた侵攻してきた場合に破壊する為の爆薬が支給されている。…あとは待つ」

貴『待つ…？』

キロ「あれが来れば、条件が整う…」

そう言うキロランケの視線の先を見ると、遠くの方に大量に浮かぶ流氷が。

あれが来るまで、どのくらい待てば良いのだろう。

そんなことを、ミツキはぼんやり考えた。

…

ミツキ達はその後、ニヴフ民族の集落に向かった。

キロ「ニヴフは、樺太ではもっとも人口の多い少数民族で、漁猟を中心として樺太アイヌとよく似た生活をしている」

貴『はえー…って、アシㇼパさん！あの人の帽子すごい…！』

アシ「本当だ！その帽子いいな！耳がついてる！」

ミツキとアシㇼパが目をキラキラとさせ帽子を見ていると、ニヴフの男は帽子を取って二人の前に差し出した。

貴『触っていいってこと？』

遠慮なく触ると、分厚いもふもふとした毛と少しだけ柔らかい耳の手触りの良さに、二人は更に興奮した様子でキャッキャとはしゃぐ。

キロ「お前達、中に入るぞ」

キロランケに呼ばれ、ニヴフ達の家屋へ移動する。

キロ「亜港監獄にはソフィアの手下が何十人もいる」

白石「なるほどね、そいつらを味方につけようってか…」

その後、金塊をアイヌのために使うという話で話し合いは終わり、作戦実行の為の準備をしながら夜を待った。

白石「そういや、ミツキちゃんは金塊に興味ないの？」

貴『……ないですね』

白石「…そう」

長い沈黙の後、ミツキはその一言だけを返した。

では何故アシㇼパ達についていくのか？

疑問が白石の脳裏に浮かぶも、それを口に出すことはなかった。