67話 山猫みたい ページ18
それから暫く進んでいると、アシㇼパが何かを見つけたのかその場にしゃがみ込む。
アシ「うお！なんだこの足跡！」
貴『足跡？』
ミツキはアシㇼパの後ろに立ち、何を見ているのかチラリと覗き込む。
アシ「メコに似てるけど大きすぎる…！」
すると白石がミツキの後ろからそれを更に覗き込み、頭が三つ縦に並ぶ。
白石「メコってなに？」
アシ「猫のこと。寒さで死ぬる者という意味だ」
白石「もっと可愛い名前つけてあげて…？」
キロ「その足跡はオオヤマネコだ」
可愛いのだろうか…少し触ってみたい。
アシ「もしかして…これがメコオヤシ？昔アチャが話してくれた猫の化け物はこれのことだったのか…」
キロ「ウイルクと一度だけオオヤマネコをとった。毛皮がものすごく高く売れたなぁ…」
アシ「味は…っ！」
そこ？と内心ツッコむが口には出さず話を聞く。
キロ「アクが多くて参ったよ。お前の親父は不味そうな顔してた」
「そうかぁ…」と嬉しそうに呟くアシㇼパを横目に、話で歩みが止まっているうちにと、地面に腰をつけ座る。
貴『ふぅ…』
白石「おいおいミツキちゃん？そんな雪の上なんて座ったら、お尻濡れちゃうよ〜？」
貴『大丈夫ですよ〜すぐ払えば』
白石「払ってあげよか？」
貴『…』
白石はミツキに無言で睨まれ、顔を逸らした。
キロ「昔のウイルクを知っているソフィアという人がいる。彼女は教養があり勇気のある、俺達の指導者だった。
…そしてとても美しく、若かった俺とウイルクは彼女に憧れたよ」
アシ「アチャが…。そんな人がいたなんて…会ってみたいなぁ。その人はどこにいるんだ？」
キロ「アレクサンドロフスク・サハリンスキー…亜港だ。
その人は亜港監獄に収容されている。証拠が一切無いので処刑ができず、しかし密かに幽閉されている。
俺達が実行した皇帝暗殺の首謀者、ソフィア•ゴールデンハンド」
白石「女囚…？親玉は女だったのか」
キロ「彼女なら、俺も知らないウイルクを知っているはずだ」
そんな話を聞きながらふと後ろを振り返ると、尾形がオオヤマネコを見ていた。
貴『…！』
尾形「…」
尾形はミツキをチラリと見るも、またオオヤマネコに視線を戻した。
アシ「尾形！峰山！亜港に向かう。…何かいたのか？行くぞ」
一瞬だけアシㇼパに視線を向けている間に、いつのまにかそのオオヤマネコはいなくなっていた。
尾形「…いかないのか？」
貴『オオヤマネコ、尾形さんみたいですね』
尾形「……ふん」
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作者名：ちあきんぐ | 作成日時：2024年3月2日 7時
