61話 狙撃 ページ12
貴『…舌触りさえ無視すれば美味しい…』
そして飼いトナカイの乳で作ったアリというバターのようなものをリペースカに塗り、頬張る。
アシ「ヒンナヒンナ！」
貴『んん〜ヒンナすぎる〜！」
白石「トナカイの乳も甘くて濃い〜！ヒンナだぜ！」
そうして夕飯を楽しんでいると、キロランケが女性に針入れを贈り物として手渡した。
キロ「トナカイの毛皮が沢山手に入ったから、針も沢山必要だろ」
白石「…今日のことは全部予定していたことなんだ…？ウイルタと接触した目的はなに…？」
ミツキも気になっていたのか、食べる手を止めることなく、しかししっかりと耳で聞いている。
キロ「俺達は皆脛に傷がある人間だ。ロシアに入国する為の旅券の申請なんて出来るはずもない。だから、密入国する。
樺太の遊牧民族は国境を自由に行き来することが黙認されている。つまり、ウイルタに変装して国境を越える」
…
そうしてミツキ達はウイルタ民族の鹿トナカイのソリに乗せてもらい、今まさにロシアの国境を越えようとしていた。
尾形「国境石だ」
貴『越えた…！』
白石「国境を越えたー！」
キロ「ロシア領に入ったぞ！」
その瞬間、力強い銃声が鳴ったと同時に、誰かが倒れるような重い音がした。
貴『な……っ！？』
アシ「撃たれたのか！」
尾形「止めるな！このまま行け！」
しかし男がトナカイ達を止めてしまう。
男「アンマー！！」
貴『そりゃ身内が撃たれたら止まるか…』
尾形はアシㇼパをソリの陰に伏せさせた。
尾形「三八式を装備しているやつをまず狙ったか…。手練れの狙撃手だ」
男「アンマー！アンマー！」
貴『危ない！！』
白石「な…っ！ミツキちゃん…！？」
撃たれた身内に駆け寄ろうと走る男に、ミツキが咄嗟に庇い伏せさせる。
キロ「峰山！そのままそこを動くなよ！」
尾形「…いたぞ。あの森の中だ」
白石「何者だ？追い剥ぎかぁ？」
尾形「木の陰からモシンナガンの銃身が少し見えた。ロシアの国境守備隊だろう。
日本軍の三八式を見て怪しんだのか…それにしても乱暴だな…白石、走って三八式を拾ってこい」
白石「できるか！！」
キロ「白石！ソリを進ませろ！あっちの森に身を隠すんだ！」
キロランケに言われ白石がトナカイを前へ進むよう引っ張るも、あっけなくトナカイは撃ち殺されてしまう。
白石「森に逃げると読まれてるぞ！」
尾形「…そもそも国境侵犯だとしても、いきなり樺太の国境守備隊に襲われたなんて聞いたことがない」
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作者名：ちあきんぐ | 作成日時：2024年3月2日 7時
