第四話 ページ5
「元からなかったって…。」
そんなのありえるはずがない。
だが実際目の前にありえている。
敦は訳が分からなくなっていた。
「じゃあなんだい?
その子は機械だとでもいうのかい?」
口を開いたのは医者の与謝野晶子だった。
「違うよ、彼女はれっきとした人間だ。
ただ生まれてくる場所を間違えてしまっただけなんだよ。」
「生まれてくる場所を?
どういうことだ太宰。」
「彼女…Aの家は大家族でそこの末っ子だったらしいんだ。
家庭は貧しくそのうえ子供は大勢いるということで彼女は生後間もなくして孤児院の前に捨てられていたんだ。」
「ひどい…。」
似たような経験を持つ敦には痛いほどよくわかることだった。
「その孤児院もひどい待遇でね“いい子”にしていないとひどい体罰があるんだ。
私が行った時もひどい有様だったよ。
子供達の大半は痩せ細っていて傷だらけだった。
彼女もそのうちの一人だ。
“いい子”にしないと何も与えられない、求められない。
そういった環境のせいで彼女は自分の意思を消して他人の命令だけを聞くようになった…と私は考えている。」
「考えているって確信は持っていないのかい?」
先ほどから話の最中にも関わらず少女に知育菓子を与え続けていた乱歩が首をかしげながら訪ねた。
太宰は少女がこうなってしまった理由をわかってはいなかった。
「聞こうにも彼女はこの有様だ、当時打つ手もなくてね。」
お手上げというポーズをとる太宰。
「そんな命令待ち娘がなんでこんなところにいる。」
「それが彼女は自分の意思で逃げ出したらしいんだ。
初めてね。」
この場にいる全員が口の中に知育菓子を入れもぐもぐと口を動かしている少女に注目していた。
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にゃあめ - やつがれ君分かってて渡したのか……推し優しすぎだろ………すきぴ (2021年2月11日 20時) (レス) id: bcb659b3e6 (このIDを非表示/違反報告)
黒薔薇(プロフ) - いえいえ (2019年8月21日 17時) (レス) id: 285fa6164a (このIDを非表示/違反報告)
ごごねこ(プロフ) - 黒薔薇さん» アアアアアア!ありがとうございます!ですが描きなおしたのが勿体ないのでこのままにします!ごめんなさい!!!!!! (2019年8月21日 16時) (レス) id: 62117aa9f8 (このIDを非表示/違反報告)
黒薔薇(プロフ) - 『http://uranai.nosv.org/uploader/common/2/e/4/2e42882cc29720f8f1d22c4dd5fa2317.png』 (2019年8月21日 16時) (レス) id: 285fa6164a (このIDを非表示/違反報告)
黒薔薇(プロフ) - 勝手に保存しちゃってごめんなさい (2019年8月21日 16時) (レス) id: 285fa6164a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:午後の猫茶 | 作成日時:2016年6月29日 0時