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レオさんの『お願い』を聞き、一斉におれ達は未だに呆けるマヨさんを取り囲む。
「これってすごい事だよォマヨさん!誰かに認められて、しかもそれがあの月永レオなんだよ!?超ラブ〜い♪」
「ウム!マヨイ先輩は僕達『ALKALOID』の誇りだよ!」
ただおれ達が捲し立てすぎたのか、マヨさんは小さく鳴いて縮こまるばかり。慌てて席に戻り、おれ達は続きを促した。
「…し、しかし私なんかがそのような大役を任されて良いのでしょうか…いいえ、良い訳がありません…あぁ今にも消え去りたい…」
「なに言ってんだ〜?おれはずっと前から認めてたぞ!なんならずっと前から一緒にライブ出来たら面白そうだなって思ってた!」
「ヒィ…!?」
「けどそん時おまえらがなんかごちゃごちゃしてただろ〜?だからそれが終わった後にって考えてたんだけど。一回サークルで会った時に話そうかと思ったらおまえいつの間にか消えてたからな!」
「す、すすすすみませぇええん…」
電話越しでさえマヨさんは更に萎縮を強める。その度にタッツン先輩が目配せすれば、少しだけ背筋を伸ばす。そんな繰り返しをおれは不思議と他人事のように眺めていた。
「ですから、私を介してあなたに昨日話を通させて頂いたんです。…皆さん、ここまではご理解頂けたでしょうか」
妙に強ばった声で朱桜先輩が訊いた。もちろん難しい話でもないし、正直まだ飲み込めてはいないけど『Knights』と合同ライブが出来たら嬉しいとは思う。それはこの場に居る人の殆どが思っているようで、異論は誰も口にはしなかった。
当の本人を除いては。
「…うぅ、胃がちぎれてしまいそう…」
依然として顔を伏せ、考えを明確に言わない。そんなマヨさんに痺れを切らしたのか、朱桜先輩が少し歩み寄ってため息混じりに言う。
「…正直、leaderの私としてはそのように自分に自信の無い方に誇りある『Knights』をお任せする気には更々なれないのですが。…これもまた経験というものなのでしょう」
「あぁそうだなスオ〜。作曲家がいる分だけ出来る曲だって違う。それと一緒だよな、トレーナーが違えばおれ達は新しい『Knights』を見る事が出来る!…アヤの作り上げる『Knights』を、おれは見てみたいんだ」
普通ならこれくらいのタイミングで承諾をするものだろう。しかしうちのマヨさんは一筋縄ではいかない。吐きそうな顔をして、遂には黙りこくった。
さすがの朱桜先輩もこれ以上の何を、といった表情で。おれも何も出来ずにいると、電話口からは打って変わって軽快な声が飛ばされた。
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作者名:冴波せつ | 作成日時:2020年5月4日 12時