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「う、ウム…でもこれだと藍良が見えな――」
「なっ…別におれ見てなくたって良いでしょォ!?ほ、ほら行こ!」
気恥ずかしくなって、君の先を行こうと歩くスピードを速める。けどおれのと君のとでは歩幅が違い、あっという間に追いつかれては寧ろ合わされている。こいつ…
「!あれは――あ…」
何かな、と言いかけたところで君は口を噤んだ。目線の先には値段が均一化された某店。
「なに、ダイ○ーが気になるの?」
「フム…『だ○そぉ』というのか…いや、違うよ。見えただけで、別に……ほら、そろそろ君の行きたいお店に行こう」
そう弁解するけど、ちらちらと見遣っているのをおれは見逃さなかった。そのあからさまな態度に、思わず吹き出してしまう。
「…ぷっ…あはは!君、ほんと……良いよ、じゃあおれが気になるから行こ」
「えっ?いや、その……」
「グッズ作る時のねェ、新種出てないかチェックしとかないとだからさァ…」
おれは手を引き、見慣れた棚の間を潜って該当コーナーへと進んだ。その間も君は『わぁ』だとか『へぇ』だとか感嘆詞を洩らす。
「…ふむ…あっ、これ良さそう…これも…」
陳列された商品を手に取り吟味する。サイズとか作りやすさを慎重に見極めていると、突然ヒロくんがおれの肩を叩いた。
「ねぇ藍良」
「ん?ハァァアアッッッ」
そこにはパーティメガネを着用した君が突っ立っていて、おれは思わず盛大に吹き出した。
「これは何かな。あ、紐があるね」
くいっ、と紐を引けば眉の部分が上下した。どうやら小細工も為されたレア物らしい。
「やめてヒロくんお願いそれ真顔で着けるものじゃないから」
「藍良?どうしたのかな?」
「ねェやめてってばこっち見んな」
腕で口元を押さえてみるけど破壊力が凄い。とてもじゃないけど耐えられるか…
「藍良?もしかして泣いているのかな…?」
「誰のせいだと思ってんの早くそれしまって死ぬ」
「う、ウム…」
かちゃりと音がしてやっと目を向けると、少し屈んでじっとそれを見つめる君が居た。
「これは藍良を哀しませる敵だったか…根絶やしにしてやる」
「ヒロくん、ステイ」
一応は商品、壊されては敵わない。慌てて止めると戦犯の君はやたらと心配してきた。
「っはァ…笑った…も、ほんと………ね、君…結構楽しんでたでしょ」
目に溜めた涙を拭いながら訊くと君は焦ったように、それでいて恥ずかしそうに笑った。
「あ、いや、…えっと、……うん…少し…」
「あはは、おかしすぎる……っはァ…君のそういうとこ、おれ好きだよ…」
おれはそう、本音として君に笑い返した。
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作者名:冴波せつ | 作成日時:2020年5月4日 12時