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何よりも怖い事 ページ33

中三の頃の日帰りでの卒業旅行で、同学年の皆で遊園地に行った時の話。
どこに行くにも、私はずっと凜と二人きりで行動していた。
はぐれない様に、彼女の手を握る。
「初めてのデートだね。」
「…他の皆もいるけどね。」
「行きたい所ある?」
「ある…けど、止めとく。ひなちゃん、絶対怖がるもん。」
「着いていくよ。どこに行きたいの?」
えっとと言った後で、彼女はこう言ってきた。
「……ま、マッドティーパーティー。」

私は正直、ホラー作品や心霊現象の類は大の苦手だ。
でも、凜がそう言ったものが好きである事は知っていた。
だからこそ、私はその行き先に賛成したのだ。
着いてみると雰囲気のあるその館に人が行列を成していて、
入り口には<アリスのマッドティーパーティー>と書かれている。
「本当に良いの…?」
「良いよ。来たかったんでしょ?」
ありがと、と呟きながらぴたりとくっつかれる。
凜と一緒なら、お化け屋敷も悪くないのかも。
やがて順番が来て、中に通される。
「わぁ、アリス可愛い。」
「どこが…!体溶けてるじゃない…!きゃあっ!」
「あ、小人さん達が血まみれだー。」
「ち、ちゃんと手繋いでてね…!」
何でこれで楽しめるの…!?
でも。
「大丈夫。ひなちゃんには私がいるもん。
私がひなちゃんの事守ってあげるね。」
そう言ってくれた時は、本当に安心出来た。

出口から物販コーナーに繋がる道に来た時には、
明るい外の空気と闇から開放された安堵感から泣き出してしまっていた。
「ひなちゃん。もう怖いのいないよ。
ごめんね。私のわがままで酷いデートになっちゃった…。」
彼女の謝罪の言葉を否定する様に、彼女を抱き締める。
「ちょっと、広い所に行こ。
ホットドッグ屋さんの近くにテーブルがあったから、そこで休もうよ。」
その提案に頷いて返すと、そこに向かって歩き出す。
着く頃には既に涙は止まっていた。
「ねえ、凜って怖いものとか無いの?
あんまり聞いた事無いんだけど。」
「あるよ。その、本当に怖いの。」
何、と訊くと返ってきたのは。
「…ひなちゃんに、嫌われる事。
だから、今のでひなちゃんが泣いちゃった時は怖かったの。
嫌われるんじゃないかって思って…。」
ふっと笑い、テーブルの上で彼女の手をそっと握る。
「嫌わないよ。むしろもっと好きになった。
あの時の凜、格好良かったから。」
彼女はえ、と首を傾げ、直後に照れる様にはにかんだ。

私は否定も拒絶もしない。
それも纏めて、彼女を愛しているから。

[魔族]Cupiditas -<別腹>で悶えさせて- ※微裏注意→←貴女らしくいて欲しいの



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設定タグ:百合 , 短編 , オリジナル   
作品ジャンル:恋愛, オリジナル作品
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作者名:螢羅(K-Ra) | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2018年12月7日 19時

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