【オリジナル】Milky Princess -彼女達の甘い秘め事-【GL/短編】 (ページ32)

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貴女らしくいて欲しいのページ32

ひなちゃんと付き合い始めた頃、私の中で
一つ確信した事があった。
人によっては些細な事なんだろうけど、私にとってはとても大きな事。

ある日ひなちゃんは、髪をとても短くして
男の子の様な服装で私の前に現れた。
「…どうしたの、その格好。」
「んー、イメチェン。
俺もたまにはこう言う格好してみたくてさ。
どうかな。」
…俺…？
「ちょっと、格好良いかも。」
「良かった。」
でも何か、ひなちゃんっぽくない。
そのまま二人で歩き出すと、彼女がそっと肩に手を回してくる。
「今日のひなちゃん、男の子みたい。」
「今までとどっちが好き？」
「…両方、かな。どっちもひなちゃんなんだもん。」
手に力が込められ、自然と彼女の方に体を寄せられる。
「でも私は、いつものひなちゃんの方が安心するの。」
足がカフェの中のテラス席で止まり、隣同士に座る。
その頃には、私達の体も少しばかり距離を取っていた。

飲み物を注文してから、話を続ける。
「いつもの俺ってどう言う事だよ？」
「普段の女の子っぽくて可愛いひなちゃんって事。」
個室であるテラス席に私達の話し声が反響する。
「今日のひなちゃんは確かに格好良いんだけどね、
ちょっと違う気がするの。
何でか分かんないんだけどね、今日のひなちゃんにはドキドキしなくて。
あ、でも普段の女の子っぽいひなちゃんにはドキドキするの…！
私は女の子っぽいひなちゃんが、好きなんだもん…。」
「凜…。」
「最初に見た時は吃驚したよ。
ぎゅってしてくれた時は素直に嬉しかった。
でもそれと一緒に…怖くなっちゃった。
いつものひなちゃんじゃなくなってたんだもん。」
そっか、とぼそりと呟く彼女が痛々しい。
「それに、私に合わせてくれたのかなって考えたら、
何だか申し訳無くなっちゃって…。」
言いながら彼女の手を握る。
「でもここにいるのは、私の大好きな女の子のひなちゃん。
だから男の子の格好なんかしなくても、
男の子みたいな話し方じゃなくても良いの。」
「じゃあ、もうこんな格好はしなくて良い？」
「うん。これからもずっと、可愛いひなちゃんでいて。」
結論が出たのと同時に、頼んでいた飲み物が到着した様で。
いつの間にか力を込めていた手を解き、僅かに距離を開けて座り直した。

「最初に会った時に良く私だって分かったね。」
「ふふ。だって私達、小さい時からずっと一緒だもん。」
だからこそ、変わらない彼女が好きなのかも。
そう思った時に、私の心のつかえが一つ取れた様な気がした。