Episode12 -3 ページ28
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今度は声も漏れないくらい驚いてただ翔さんを見つめ返す。
「俺も男なんで、潤くんでしたっけ？彼の気持ちはよくわかります。好きな人を自分の手で幸せにしたいって、思わない男はいないと思いますよ」
知った風に言う翔さんは男の人の顔をしていた。
私ではないどこかを見て、優しい顔をする。
ショックなのか何なのか、翔さんのその表情に胸の中がざわざわと音を立てた。
「ですが俺は、その彼のように強引にはできません。性格的にも、立場的にも。だから今のまま甘んじていました。……ですが、君のためなら別ですよ、Aさん」
「別…？」
「はい。ずっと見てきた君が俺と同じような悩みを持っているなら、君のために俺は強引な手段にでも出ようと思います。何かを変えるきっかけは、このくらい強引な出来事の方がきっといい。……言ってる意味、わかりますね？」
「……それは」
もちろんわかる。
痛いくらい分かるけれど、ここで頷いてしまっていいのかわからない。
私が戸惑っていたら翔さんが私の返事を待たずにまた口を開いた。
今度は私としっかり目を合わせて。
見慣れた婚約者の顔で、優しく笑う。
「俺は、Aさんとなら結婚してもうまくやっていけると思ってました。ビジネスとしての提携だけでなく、家族としても幸せに暮らしていけたと、そう思ってます。君はどうですか、Aさん。俺が相手では不安ですか？」
きっと全部わかってるから、翔さんはそんなことを言う。
いつか小梅ちゃんが言っていた通りだ。
私の小さな恋心なんて、翔さんにはバレバレだったに違いない。
「…私も、同じです。翔さんとならきっと幸せな家庭を築けたと思います。不安だなんてとんでもない。とても心強くて、温かいです」
「俺もそう思います。でもAさん、君には好きな人がいる」
「はい。…翔さんにも、好きな方がいらっしゃる」
初めて口に出してみれば存外それはすとんと胸の中に落ちた。
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作者名：iCHiKA
| 作成日時：2020年12月10日 17時
