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Episode12 -4 ページ29
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翔さんだって普通の男の人だ。
普通に恋くらいするするだろう。
今の私には他の誰よりもそれがわかる気がする。
「俺たちは今、互いにその相手を取り逃がそうとしています。そんなの、よくないですよね」
「……でも、これは私たちが決めたことじゃ…」
翔さんが何を言おうとしているのかわかるから。
私はちょっと怖い気持ちになって言葉を濁した。
だって私は今までこの環境の中にいた。
一人でどう生きていくのか、その方法を知らない。
翔さんが、ふいに目を閉じて何かを想うように微笑んだ。
開かれた瞳には紛れもない愛しさの色が馴染んでいる。
「それでも、俺は彼女を幸せにしてあげたいので。……君との婚約を必ず破棄して見せますよ」
「っ」
息を飲んだ。
破棄して見せる、そう言い切った翔さんの声は、本当に優しい、翔さんそのものだった。
私にだってわかっている。
私が潤くんと結ばれるにはどうあがいても翔さんとの婚約を破棄するしかない。
そうでない限り、潤くんと生きていくことはできない。
わかっている。
でも…。
「私…私も、頑張ります」
「え…」
「私、潤くんとの…自分ためだけじゃなくて、大好きな翔さんと翔さんの好きな人のために、私も頑張りますから」
誰よりも私に優しくしてくれたこの人に、全部押し付けたりなんてできない。
「っ、」
今度は翔さんが目を丸くした。
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作者名：iCHiKA
| 作成日時：2020年12月10日 17時
