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Episode12 -5 ページ30
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息を飲んで私を見つめている。
その顔が、ふいに泣きそうに歪んだ。
「……Aちゃんは、本当にいい子だね」
「それは…翔さんの方ですよ」
昔のような言葉に胸が締め付けられる。
終わりを探す、私と翔さんの最後の共同作業が始まる。
本当なら人生を最後まで連れ添うはずだった人の、幸せを願うために。
私たちの間から音が消える。
静寂を割くように、スマホが音を立てた。
「ごめんなさい」
私はスマホに手を伸ばす。
そこには、潤くんの名前が表示されていた。
「あ…」
「もしかして、彼ですか？」
「…はい」
一瞬でバレた。
もっと気を付けないといけないかもしれない。
私の反応に笑うと翔さんはソファから立ち上がった。
「じゃあ俺はこれで行きますね。きっと何とかしますから。じゃあ…おやすみなさい、Aさん」
「おやすみなさい、翔さん」
翔さんが扉の向こうに消えるのを待ってから、私はスマホを通話ボタンを押した。
「もしもし、潤くん？」
『A、ちょっと窓の近くにいろよ』
すぐに潤くんの声が聞こえてきて嬉しくて胸が高鳴った。
だから。
「ほら…これが一番君を幸せにできる……ね、Aちゃん」
扉の向こうの翔さんの小さな小さな呟きは私の耳には届かない。
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作者名：iCHiKA
| 作成日時：2020年12月10日 17時
