Episode11 -5 ページ25
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『大丈夫、必ずそっから連れ出してやるから。もう少しいい子で待ってろ』
「……うん」
潤くんの声は今も力強い。
会えなくなってしばらく経つけど、潤くんが不敵な顔をしてるのがわかる。
厳しい状況でも彼は、楽しむように笑っている。
「そうだ、あのね潤くん、今日パーティーがあったんだけど…終わったよ、ピアノ」
『そっか。無理してねぇよな？』
「…うん、してないよ」
本当は少しだけ手首が痛む気がした。
でもこんな多少の無理は、無理のうちには入らない。
翔さんが言っていたように無理をしないばかりが私たちの守り方ではないから。
痛いなって潤くんに言ってみたい。
きっと心配してくれる。だけど同じくらい、心配させたくない自分もいる。
心とはなかなか難しいものだ。
「まぁ、成功したってお父様に認めてもらえるわけじゃないんだけどね」
『ちゃんとお嬢様の仕事したってことだろ。偉いな』
「そんなことないよ…」
苦笑いが浮かんだ。
潤くんには見えないのが幸いだけど。
『俺が行くまで諦めんじゃねぇぞ』
「うん、もちろん」
その強さを貴方から教えてもらったから。
自由な場所で自由にやるには、伴うだけの強さが必要だ。
『あんま長電話してるとバレるかもしんないしな。そろそろ切るぞ』
「長くなっちゃってごめんね。ピアノの報告したかっただけなの」
『ほんとはもっと聞きたいけどな。それは今度直接会ってからにするわ』
「うん…！」
『じゃあおやすみ、A』
「おやすみ潤くん」
切れたスマホを握りしめて天井を見つめる。
お嬢様の私は今日はもう終わりだ。
「もう、今日は寝よう」
重たい体を起こす。
触り心地の良いドレスの袖フレアがまだ包帯に包まれた手首を撫でた。
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作者名：iCHiKA
| 作成日時：2020年12月10日 17時
