籠中の妖花【usss】 (ページ3)

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三輪ページ3

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大きな紫陽花が描かれた豪奢な襖から顔を覗かせたのは、薄紅に色付いた肌を持つ美青年であった。
彼は細く開いた襖の隙間からひょこりと顔を突き出し、苺のような真っ赤な目をまんまるくして、口を開く。

「あれっ、楼主達じゃありんせんか。珍しいでありんすねぇ、ここん階に居るんは。」
「あ、ああ、紅雪。お前も珍しいな、ここに居るのは。」

彼は隙間から身体を滑り込ませ、楼主と呼ばれた、白髪混じりの男と言葉を交わす。
姿を全て現したその青年は、至って普通な赤い着流し姿だった。だが、この美貌からしておそらくここの遊郭の陰間の一人だろう。輝くほどの美貌が、身体の隅々まで手入れを怠っていない事を示している。
彼は長い赤い髪を纏めている簪の飾りを揺らして、首を傾げた。

「ア、せや、主さん方、随分と騒がしくしていんしたね、わっちの部屋まで聴こえてきんしたよ？何していたんでありんすか？」
「アー……彼女についてだよ。」
「…この娘の姐さんを探していると？」
「そうなんだがなぁ、なんせもう十五を過ぎてるもんだから。」

楼主は深いため息を吐き、チラリと私を見遣る。私は視線から逃れるように、少し身を固くして、足をモゾモゾさせた。
そう、私はもう十五歳を超えている。今は十六歳だ。遊廓では十歳くらいの時に禿として教育が施される。もうその年齢を過ぎている私は扱いが面倒なのだ。
そう思って、悲しくなり目を伏せていると、陰間の場違いに明るい声が鼓膜に響いた。

「ア、そうだ、この子、わっちのところで預かればいいじゃありんせんか。」
「エ、いや、だがね、花琳がこんな訳アリを抱えるのは外聞が」
「そんなの大丈夫でありんす。最初はなにか言われると思いんすが、それもこの子を一人前の花魁に育て上げれば消えるでありんしょう。」
「ウ、たしかに、そうだが、」
「ンじゃ決まり。ホラそこな娘、立ちなんし。行きんすよ。」
「は、はい…！」

ぱっ、とこちらを向いて言った彼に言われるがままに立ち上がる。背中からは困惑した遣り手と楼主の声が聞こえてきた。
私はサッサと部屋から出た彼を追いかけつつ、その白い首筋で揺れる赤い後毛を見ていた。

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