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「…じゃあ、家の事情で何回も引っ越しっていうのは…」
「あの学園のスカウトやらいろんなハエ共を振り切っていくうちに、いつのまにかな」
「(ハエ共…ああ、誘拐犯とかかな…?)」
「ウチは家族全員アリスだから」
「え、」
家族全員、アリス!?
「俺だけなら、コソコソ逃げまわんのなんてまっぴらだけど、ボコボコにしてやるし。妹も狙われてるとなれば放っとくわけにもいかねーからな。学園にしろ、ハエにしろ」
「妹って…」
「ウチは家族全員、“炎のアリス”を持ってんだよ…って言っても、死んだ母親は違うアリスだったらしーけど。父親のアリスは残りカスみてーなもんだし」
え…ええ────っっ!!
補足として、棗は付け加えて説明して言った。軽く言う棗に、流架はその群青の瞳を大きく見開かせた。
「す…すごい!」
「別にそこまでめずらしかねーよ。お前みたく突然変異で出るアリスの方が結構…」
「でもあんなすごいアリスを、家族全員がもってるなんて……あんな風に人を守れる力…僕と全然違う…」
初めて見た時から空気が違ってた。
つよくて、しなやかで
しっかり自分の足で立って、前を見据える目──…
「ゼッタイにこの子は渡さナイ!!」
全てを可能性に変えてしまいそうな、強い力────…
「(あれ……
今何で、あの時のママの顔が浮かんできたんだ…?)」
「へんな奴、そんないいモンじゃねーだろ。
みんながみんな、お前みたいにこの力をいい風に捉える奴ばかりなら、こんな移りまわるような苦労はしねーっつーの」
「え…」
棗の言葉は思ったより響いて聞こえた。ため息を吐いた棗は座っていた場所から飛び降りた。
「あ、ひゅうが君…」
「棗でいい」
あ……
「お前、名前は?」
「ル…ルカ」
「ふ──ん。「ルーちゃん」な」
「な…っ!?ルーちゃん…!
…なつめ、わ!?、ど…どーやって?!」
棗は意地の悪い顔をして、屋上だというのに飛び降りて行った。
棗は、空を自由に渡る鳥みたいだった……
出口の開いたかごの中から
羨ましそうに空をながめてる僕を
鼻で笑ってからかい飛んで行った。
──そんな自由に
力強く飛んで行く棗の事を考えてるうちに
朝まで渦巻いてた息苦しさが…いつの間にか……
「(あ…きえてなくなってる…)」
そうして、出会いの時間はあっという間に終わった。
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作者名:未来 | 作成日時:2023年3月24日 23時