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しんみりした空気の中で突然、陽一くんに髪をくいっと引っ張られる。





「にーちゃんっ」


「あ…棗くん、」


「そういえば、さっきも見つからなかったわね棗君」





トイレに行ったきり、棗くんの姿を見てない。蛍も思い出した様に頷いた。流架や陽一くんも周囲を見渡す。


今度は、胸がドクリと嫌な音を立てた。





「もしかして紅蓮の君…立ち入り禁止の場所に入られてしまったのかしら………」



「えっ、あいつ約束破ってまさか…」



「そういえばさっき…校長が“案内された場所以外に踏み入ったら、何が起こっても…”って言ってたのは…」



「その言葉(セリフ)と今、棗がいなくなってるのは、何か関係があるんですか?」



「……」



「一体花姫殿(ここ)って…」





流架が答えを求めるように、花姫達を見た。無言になる花姫達に、あたしの心臓は波立ってて落ち着かない。


この沈黙を破ったのは蛍だった。





「…ここにお招き頂く前から、実はずっと気になっていたんですけど。

姫さまって変人なんですか?」



「え…(…い、言った…!蛍、言っちゃったよ…っっ!)」





突然の場違いで直球過ぎる蛍の言葉に、この場の空気が一瞬凍りついた。


静音先輩や花姫達は無言で蛍へ視線を移す。





「ほ…蛍〜〜っっ、しい〜っっ!
そんなんはっきりゆうたらあかん!」


「な…何をおっしゃるの若紫さんったら!」


「何を根拠に姫さまに向かってそんな…」


「だってよだれ…」


「…口を慎みなさい若紫さん」




静音先輩の声に花姫達は口を閉ざして、蜜柑は蛍の口を押さえる。




「蛍はも───!」


「…姫さまは確かに変人よ」


「「「(ええっ)」」」





溜息をつきながらも答える静音先輩は爆弾を落とした。
み、認めた…いいのかな、こんなに言っても…。


静音先輩は続けて呟いた。





「しかし、私達にとって最大の敬意を払うお方である事に変わりはないわ。


退屈しのぎにたまにいたずら心を発揮なされたりはするけれど…


あの方は、当代随一の“結界”のアリスの持ち主。いわばこの学園の守り神のようなお方。


姫さまはこの学園からずっと離れる事もなく、常に主力として外敵からこの学園を守って下さっているのよ」



「そうよ!偉大なお方なんですから!」


「なくてはならないお方なんだから!」


「どれだけ私達が束になっても背負えないような重責をほぼ1人で負ってらっしゃるすごいお方なんだから!」

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作者名:未来 | 作成日時:2023年3月24日 23時

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