【現パロ金カム】紅影 (ページ8)

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第六話ページ8

しばらくして昼休憩の時間となった。
うちの会社はブラックでは無いからな。昼休憩はちゃんとある。

そのせいか自動販売機にはブラックコーヒーが売っていない。

たまには気分転換に屋上で過ごそうか。
そう思いついた尾形は弁当を食べ終わった後煙草を片手に屋上へ向かう。

ちなみに煙草の種類はメコ。

コンビニにはあまり売っておらず、近所のタバコ屋の婆ちゃんの所でしか売っているところを見たことがない。

かなり特殊なものなのだろ。

階段を上がると目の前に扉があり、ギィ...と不快な音をたてて無理やり開けた。

空は曇天模様。
雨が降りそうな気もするが、煙草を吸う本数だけだ。

尾形は屋上の入り口の目の前にある柵によりかかり、煙草を口に当てて曇天の空を眺めた。

______夢の世界があれば、一生遊んで暮らせたり。現実では出来ないことが出来るのか...。

それはそれで面白そうだ。

尾形はそう考えフッ笑った。

「兄様」

突然目の前から弟の勇作の声が聞こえた。
驚いた尾形は咄嗟に勇作に目を向ける。

「勇作さんですか。よくここに俺がいるとわかりましたね。」

尾形は勇作と目を合わせたまま、もたれかかっている柵に煙草を押し付けて火を消した。

「えぇ。兄様が上がってゆくのが見えましたから。
兄様は何故屋上に？」

「唯の気分転換ですよ。勇作さんこそどうして俺を追ってきたのです？」

尾形は不自然な笑みを浮かべて、勇作へ逆に問いかけた。

「まぁ、兄様と二人きりになる時間なんて滅多に無いものですから」

「そうですか。まぁ俺が話せる物なんて、何もありませんが___」

グラッ________

話の途中で体が後ろへ揺れ動いた。
一瞬状況が理解できない。

「兄様ッ！」

勇作から距離が離れてゆく、そして背中の浮遊感。
寄りかかっていた柵が壊れた。

一気に死に対しての恐怖が襲ってくる。
盛大な心臓の鼓動が聞こえた。

弟は自分に手を伸ばした。
今ならギリギリ腕を伸ばせば届く位置。

全てがスロー再生のように遅くなっていた。
そして、走馬灯も見えてきた。

「...」

そっと腕を伸ばす。

だが、もう遅かった。

「」

弟が何かを言っている。
だが、聞こえない。

なんだ。
死は、なんて呆気ないんだ。

足が離れ、ビルの側面についた窓が見えた。

尾形は落ちながらも弟を見つめた。
悲しみに満ち溢れているその表情の一瞬

彼は、最後に笑った。