212話 生きる（2） ページ10
なにやら揉めてそうな感じだ。
杉元「なんかモメてるぞ」
岩息「でやあッ！！」
真ん中で暴れてる男。強いな・・・。
岩息「はあッ☆」
うっっっわ。知ってるわこの人。
岩息「ややや？杉元さんと松崎さんではありませんか」
「奇遇ですな」
杉元「見なかったことにしよう」
A『そもそもそ知り合いじゃないしな』
ーー
杉元は百を背負ってくれるらしいし谷垣と鯉登少尉は負傷している・・・。
白石が男を背負えるとは思えないし、俺は杉元の荷物を変わりに持っている。
と言う訳で月島軍曹を運ぶのは岩息に頼んだ。
岩息「船での入国は危険ですからねぇ」
「私たち同じ道筋で北上してたんですねぇ
たはッ☆」
月島軍曹は冷ややかな目を岩息に向けていた。
白石「あばよキロランケ」
キロランケの遺体は流氷の欠片で覆った。
春が来たらアイツは自分の故郷に流れ着く。
・・・キロランケの死をアシﾘパとアンケシさんはどう受け取ったんだろう。
それだけが気がかりだ。
なんせ、俺にとっては因縁の相手であっても、
二人からしてみれば第二の父親的存在であったはずだから。
杉元「コイツら亜港まで運んだらまたソフィアを探しに行こうか？」
A『シロも協力してくれるってよ』
シロが俺の肩で胸を張った。
でも、アンケシさんが首を横に振った。
アンケシ「いや・・・ソフィアとは必ずまた会える」
アシﾘパが頷いた。
アシﾘパ「私とアンケシを探しに来るはずだ」
俺達は四人並んで歩く。
アンケシさんの横髪が風で揺れるたびに顔にかかり邪魔そうだ。
・・・・あ、そうだ。
A『アンケシさん。これ返すよ』
外套に仕舞っていたモノをアンケシさんに差し出す。
アンケシさんは「あ」という顔をし、俺に向かって微笑んだ。
アンケシ「ありがとうA」
アンケシさんはそう言うと受け取り、赤色のマタンプｼを丁寧に巻いた。
杉元もアシﾘパにマキリを返していた。
俺と杉元は少女ふたりを見つめた。
杉元「さあ北海道へ帰ろう。アシﾘパさん。
アンケシさん」
天高くに登った太陽が俺たちを包み込んだ。
アンケシさんとアシﾘパの瞳が光を受けて綺麗に輝いた。
・・・アンケシさんが自分の心臓に矢先を向けているのを見たときは、かなり焦った。
一切の迷いを示さずに、自分を殺そうとしていた。
【生きろ】と人に向けて言ったのは初めてかもしれない。
でも、叫ばざるを得ないくらい、俺はこの子に生きてほしい。
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白文鳥 - ととさん» 嬉しいお言葉を有難うございます！訳あってこの作品はpixivにお引っ越ししました。励みを有難う御座います！そちらの方で頑張ります！ (2022年1月8日 19時) (
レス) id: 50fca864bb (このIDを非表示/違反報告)
とと - ここまで一気に読み進めてしまいました。続きが読みたくて、急いで単行本を読みました笑 主人公と周りとの距離感がたまらなく好きです。 (2021年6月24日 22時) (レス) id: 2c3ad1893b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：白文鳥 | 作成日時：2021年1月18日 21時
