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210話 存在証明(1) ページ5

真っ白な雪景色。

そこをただひたすらに走る。

アンケシ「誰か・・・応えてくれッ・・・」

  「アシリパ・・・!!」

百が何をするのか分からない。

もしかしたらアシリパを殺して追ってくるかもしれない。

アンケシ「ッ・・・はぁ・・・はぁ・・・は」

走って走って走り続ける。

止まってはいけない。

止まっている場合じゃない。


アンケシ「・・・・わッ」

足元の流氷がズレて危うく落ちそうになった。

何とか飛び越え、落ちるのだけは回避した。

アンケシ「・・・・・・・・」

ドクドクと心臓が波打つ。

普通に、死んだかと思った。


「・・・・・アンケシ様!!」

「アンケシ様だ・・・!!」


アンケシ「・・・・・え?」

私の目の前に、囚人服を着た男性が数人。

アンケシ「・・・・だれ?」

トゥキ「やはり見間違いじゃなかった」

  「俺の名前はトゥキ。覚えてますか?」

アンケシ「・・・・あッ」


私の、コタンにいた人たちだ。

アンケシ「生きて、た?」

皆が頷いた。

トゥキニシパが私の手を掴んだ。

トゥキ「我々のために・・・ありがとうございます。いつでも戦う準備は出来ています」

アンケシ「戦う・・・?ま 待って!!
私はアシリパを――」

トゥキ「アンケシ様。我々は貴方が消えた数年間。仲間や友人の為に戦い続けた」

アンケシ「・・・・・・・っ」

トゥキ「貴方様は、まだ逃げるのですか?」

トゥキニシパの手に力が籠もる。

私は、思い切り手を払いのけ、後退った。


アンケシ「ちがっ・・・逃げるんじゃない。
戦ってどうする?殺し合うのか?」

男たちが頷き、「ついてきてください」と微笑んだ。

アンケシ「嫌だ。私は行かない」

  「私は――」

トゥキ「イソンノアシがしくじらなければ我々は全てを失わずにすんだんだ」

アンケシ「・・・・!」

トゥキ「貴方様の父親の尻拭いをしてくださらないのですか?」

トゥキニシパの周りにいた男性が私を掴む。

トゥキ「カムイの声はまだ聞こえてますよね?
だって貴方様は・・・【アイヌカムイ】ですから」


男たちの力に敵うはずがない。

でも、このままじゃ、何処に連れて行かれるか分からない。

アンケシ「やめてくれッ・・・私が戻らないとアシリパが」

トゥキ「誰ですかソイツ。もう関わることは無いですから放っておきなさい」


「【皇帝は【神の代理人】などではなく【単なる人間】なのだと証明するしかない・・・】」


証明、そうか・・・。

210話 存在証明(2)→←209話 罪穢れ(3)



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白文鳥 - ととさん» 嬉しいお言葉を有難うございます!訳あってこの作品はpixivにお引っ越ししました。励みを有難う御座います!そちらの方で頑張ります! (2022年1月8日 19時) (レス) id: 50fca864bb (このIDを非表示/違反報告)
とと - ここまで一気に読み進めてしまいました。続きが読みたくて、急いで単行本を読みました笑 主人公と周りとの距離感がたまらなく好きです。 (2021年6月24日 22時) (レス) id: 2c3ad1893b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:白文鳥 | 作成日時:2021年1月18日 21時

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