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210話 存在証明(2) ページ6

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アンケシの弓は地面に落とされ無駄な抵抗ができないようにされてしまった。

トゥキ「煮雪黎子・・・」

アンケシ「・・・・・・え?」


アンケシが目を丸くした。

アンケシ「そうだ・・・。それは私の和名」

トゥキが頷き、微笑んだ。

トゥキ「貴方様のお母様死ぬ間際に教えて下さりましたよ・・・さて」

  「他の連中に奪われぬよう、今日から和名を名乗ってください」

  「貴方様の力は我々のもの・・・」


アンケシは目を細め、うつむいた。


アンケシ「――・・・してやる」

トゥキがアンケシを見る。

アンケシがもう一度、呟いた。

アンケシ「証明してやる・・・私が・・・」

  「ただの、アイヌだってこと」

自分を抱きかかえていた男の手に思い切り噛み付く。

男が怯み、アンケシは地面に落とされた。


アンケシ「アチャに言われてきた」

  「この耳は皆の為に使えって」


アンケシは男たちから距離を置くと弓を拾い、矢を強く握った。

アンケシ「皆のための力だけど・・・使うときは私が決める」

  「そして・・・こんなものは・・・」

  「もういらないッ」


アンケシは自分の心臓に矢先を向けると、思い切り腕を振った。


アンケシ「ッ〜・・・!」

トゥキ「とめろッ!!」

トゥキがアンケシに向けて手を伸ばした直後。


背後から三十年式歩兵銃が飛んできた。


トゥキの後頭部が鈍い音をたてる。

周りにいた男たちは背後を振り返った。


A『生きろッッッッ!!!』


腹の底から出されたその声量は吹雪にも負けないくらいの大きさだった。


アンケシ「!!」


アンケシの手から、毒矢が落ちた。


それを見たトゥキが立ち上がり、毒矢を拾うとアンケシに向かって駆け出す。

トゥキ「妻と子供の・・・ためにッ・・・!」

Aは軍刀を引き抜くとトゥキの背中に向けて投げた。

ズブリと右胸に軍刀が深く突き刺さり、トゥキは吐血した。

トゥキ「・・・お前は・・・償うべき・・・」

アンケシに手を伸ばすが、力なく地面に倒れ込む。


A『償うのはお前らの方だ』

Aが仲間を睨みつけると仲間たちは走って逃げていった。

アンケシは呆然とトゥキの遺体を見下ろしていた。


A『アンケシさん』

アンケシが声に反応し、顔をあげた。

アンケシ「A・・・・・・」

  「A!!」


アンケシは思い切りAに抱きついた。

勢いが強くて、ふたりは流氷の上に倒れ込んだ。

211話 ユルバルス(1)→←210話 存在証明(1)



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白文鳥 - ととさん» 嬉しいお言葉を有難うございます!訳あってこの作品はpixivにお引っ越ししました。励みを有難う御座います!そちらの方で頑張ります! (2022年1月8日 19時) (レス) id: 50fca864bb (このIDを非表示/違反報告)
とと - ここまで一気に読み進めてしまいました。続きが読みたくて、急いで単行本を読みました笑 主人公と周りとの距離感がたまらなく好きです。 (2021年6月24日 22時) (レス) id: 2c3ad1893b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:白文鳥 | 作成日時:2021年1月18日 21時

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