暗殺チームのバンビーニ【ジョジョ5部】

ベイビィ・フェイスは生まれない�� ページ11

 


品良くとりすました優男のような容貌とは裏腹に、立ち振る舞いはいたって荒っぽく無骨な男 (何せ、初対面でいきなり銃をぶっ放してきたぐらいだ)。

──だけど彼なりの優しさや人情を持っている。
このひとは、ただ厳しいだけのひとじゃない。

長い睫毛に薄明の光をたたえた横顔を盗み見ながら、Aはプロシュートをそう評した。







お水を飲みたくてキッチンの場所を尋ねると、まあ大雑把な道案内であしらわれた。
そのままリビングソファーで寝よう。
就寝の挨拶をしてプロシュートの部屋を出た。



打ち放しコンクリートの壁に剥き出しのダクトが這う天井。はじめてアジトを見た時の無機質な印象は、キッチンにも同じことが言える。



ぎっしりとストックされたミネラルウォーターや水煮缶、ドライトマト、野菜のオイル漬け瓶……。

保存食が大半を占めている冷蔵庫やパントリーの中は男所帯にしては意外なほど整頓されていて、それがかえって生活感がない、と言えなくもない。

彼らにとってキッチンはストックスペース以上の役割は果たしていないようだった。



かがんで下段のミネラルウォーターのボトルを一本もらい、そのまま床にぺたりと座り込む。

ミネラルウォーターを、こくん、と喉に流す。
身体中に潤いがしみわたる感覚。
夜と朝の境目のひんやりとした空気は、火照った頰に心地よい。



瞼がとろんと下がっては持ち上げるのを何度か繰り返しながら、冷蔵庫の中身を思い浮かべる。

(なにか温かいもの、スープでも作ってみようかしら……)

野菜とビーンズをたっぷり入れて煮込む映像(イメージ)。
ローリエの香りが蘇る。
パンを入れてリボリータにしてもいいかも。
ソルベの好物だからよく作ってあげたっけ……。



◆



「キッチンで行き倒れとは、なかなかユーモアのある死に方だ。息子(ジュニア)にも見せてやりたかったな」
「死ぬのは勝手だがよォ、んなとこに寝転ばれるとジャマになんだろうが」
「ご機嫌ナナメかい？ ギアッチョ」


「……『ご機嫌ナナメ』ってよォ〜〜〜〜」

答える声はワントーン低い。


メローネは思わず、しまった、と口許だけの笑みを作って目を逸らした。

こうなると面倒なんだよな……。


 

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