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気がつけば先程の召使は、居なくなっていた。





そして代わりに入ってくるのは、先程の召使達とは、服装も変わった女性




はて、この綺麗な人は誰だろうか。
こんな綺麗な人に私は、心当たりも無ければ見覚えさえも無い。




そして同時に気づくのは、入口の奥の方だろうか。

黒服の男達が立っている。あれは、まるで何処かのお偉いさん達がよく側近につけているボディーガードと云うものによく似ていた。そしてその手には、拳銃。




このご時世この日本では、拳銃の所持など違法である。そしてこの異様な空間。何処かの外国人共の隠家・・・又は、お偉いさんの家か何かか?








「A様、お口をアーンと、してくださいまし」







しかし・・・・・・、なぜ?

そんな所に自分が?







「A様?A様?」





理解し難いこの状況。深まるばかりの困惑。





「ほーら、しっかりお口をお開きくださいまし」




わからない、と云う状況。それこそが、問題なのだ。


だから、ソレは先程から近くに差し出されているスプーンを見落としていた。




もっとも。仮に気がついていたととしても、それが自分に差し出されたものだとは夢にも想像しないだろう。Aとやらが、食べればよいのだから。




だが、考え込んでいたソレを前にして修道女はついにしびれを切らす。


差し出していたスプーンをソレの口の中へとにこやかながらも拒絶を拒む笑顔で放り込んできたのだ。






「好き嫌いは、いけませんよー。はい、アーン」






一すくいは間違いようのない現実を、理解出来ていない“A”に突きつける。





煮込んだ野菜。




口に放り込まれたのは、それだけだ。

だが、放り込まれた当の本人としみれば理解し難いじたいに、さらに混沌さが加えられたと云う事でもある。




つまり、ソレが、私が、Aと云うこと。







なればこそ、心底叫ぶのだ。





なぜだ、と。

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作者名:巫冥 | 作成日時:2017年7月23日 10時

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